神殺しのクロノスタシス3

おじさんについて、駅を出ると。

おじさんは、申し訳無さそうに頭を下げて言った。

「申し訳ありません、生き神様。ここからしばらく、歩いて頂かねばなりません」

「…?」

「しばらく行けば、谷まで向かう人力車を用意しております故。しばしの間、不浄な地面で御御足を汚すこと、辛抱してくださいませ」

…よく分からないけど。

「歩けば良いの?」

「は…」

「良いよ」

列車の中で、ずっと座りっぱなしだったから。

足動かしたくて、うずうずしてたところだし。

「おぉ…。なんと寛大な御心。さすがは我らの生き神様…」

「?」

「ささ、こちらへ。私めについてきてくださいませ」

「…分かった」

私はおじさんについて、どんどん人気の少ない、山道に向かって進んでいった。

最初は、かろうじて舗装された山道だったけど。

段々と、舗装すらされていない、獣道になってきた。

…こんな山の奥で、どんな任務が待っているのだろう?

おじさんに聞いてみようかと思ったが、女王様から秘密の勅命なら、こちらから尋ねるのは良くないかと思って、聞けなかった。

辺り一帯、鬱蒼とした雑木林に囲まれ。

段々と、陽の光も当たらなくなり、右も左も分からなくなってきた頃。

「こちらでございます、生き神様」

「…?」

獣道の途中で、古ぼけた人力車と。

若くて精悍な顔つきをした、男の人が二人待っていた。

…誰?

すると、その若い男の人二人は、私を見て驚愕の顔になり。

そして、いきなり私の足元にひれ伏した。

「おぉ…!生き神様だ、本物の生き神様だ…!」

「ババ様の言っていたことは、本当だったんだ…!本当に生き神様が…!」

…??

どうしたんだろ、この人達。

するとおじさんが、若い二人に怒声を浴びせた。

「お前達!早く生き神様をお車に乗せんか。生き神様を待たせるとは何事だ」

「も、申し訳ございません」

「お許しくださいませ、生き神様」

…謝られた。

更に。

「では、失礼をして…」

二人の男の人が、私を左右から抱え上げ、人力車に乗せた。

びっくりした。

「さぁ、ここからは御御足を汚すことはありません。我々が、桔梗谷(ききょうだに)までお連れします」

「…?こんな獣道を、人力車で通れるの?私、自分で歩けるよ?」

こんな険しい山道、いくら若い男の人とはいえ、人力車で引っ張っていくのは大変だろう。

しかし。

「おぉ…!なんと寛大な御心」

「我々の心配をなさってくださるなど…。やはり生き神様は慈悲深いお方」

…?

「ですが、ご心配なさらず。生き神様をお運びする重要な使命を賜り、我々は光栄でございます」

「どうかご安心して、谷に着くまで、しばしそこにお乗りくださいませ」

…よく分からないけど。

私は、これに乗ってれば良いらしい。

仕方ないので、私は黙って人力車に乗って運ばれることにした。