神殺しのクロノスタシス3

私服に着替えて(秘匿任務なので、制服を着ちゃ駄目って書いてあった)、駅に着いてみると。

やはり、トラーチェに向かう最終便が、まだ残っていた。

ちょっとギリギリだった。

切符を買い、滑り込みで列車に乗り込む。

東方都市トラーチェ、というのが何処にあるのかはよく知らないが。

夜間ずーっと走り続けて、現地に着くのは明日の午前だと言うのだから、かなり遠いのだろう。

そんな遠いところに、一人で行くのは初めてだ。

…いや、そもそも。

こうして、一人で旅をすることすら、初めてだ。

窓の外を見ても、外は真っ暗で、しかもトンネルの中を走っているので、外の景色を眺めることも出来ない。

…退屈だな。

今ここに、ジュリスがいてくれたらな。

色んなお喋りが出来るのに。

ジュリスは物知りで、色んな面白い話を知っている。

特に、ルーデュニアに来る前にいた世界で。

青い薔薇のブローチをつけた、黒い死神さんの話。

あれは面白かったなぁ。

特殊素材で作って、ジュリスがこっそり魔法で強化した鎌を、平然と使い潰して、ぶっ壊していたらしい。

凄い怪力だ。

自分が魔導師じゃなかったら、絶対あんな恐ろしい人物と取引はしなかった、とジュリスに言わしめた、黒い死神さん。

あの人の武勇伝を聞くのは、楽しかった。

ジュリスは、お話上手だもんなぁ。

こんな退屈なときに、傍にいてくれたら。

…ううん。

退屈じゃないときでも、ジュリスが傍にいてくれたらな。

…でも。

私がいたら、ジュリスは邪魔なんだよね。

私はきっと、ジュリスの足を引っ張る、足手まといなんだよね。

だからジュリスはきっと、もう匙を投げて。

一人で行ってこい、って、私を突き放したんだろう。

…。

…もし、この任務をちゃんと、誰にも頼らず、一人で達成出来たら。

ほんの少しは、見直してくれるだろうか?

「ベリクリーデも、やれば出来るじゃないか」って、褒めてくれるだろうか。

…うん、きっと褒めてくれる。

だから、頑張ろう。

そう決めて、私は窓に寄りかかって、そのまま目を閉じた。

朝になれば、トラーチェに着いているだろう。