…?誰だろう。ジュリス?
いや、違う。
時刻は、既に午後10時を回っている。
以前午後9時頃、報告書出来たから取りに来てーと言ったら、「そんな時間に女性隊舎に行けるか」と怒られたことがあるから。
何でこんな時間だったら、ジュリスが来ちゃ駄目なのか分からないけど。
とにかく、だから多分ジュリスじゃない。
「誰?」
部屋の扉を開けると、そこには予想通り、ジュリスじゃなくて。
一人の若い女性魔導師が、白い封筒を持って立っていた。
あ、この人。
ジュリスの隊の人だ。
袖に巻いてる腕章の色で、どの大隊に所属する魔導師なのか判別出来る。
「あ、あの…夜分に失礼します。私、ジュリス大隊長の使いで、アナベル・ハードウィックと言います」
「…私に、何か用?」
「は、はい。ジュリス大隊長から、これを渡すようにと…」
アナベル・ハードウィックは、手に持っていた白い封筒を差し出してきた。
…?お手紙?
中を開けてみると、それはいつも、任務を申し付けられるときの指令書だった。
しかし、その指令書は、いつものものとは違っていた。
「これって…」
「は、はい…。あの…フユリ・スイレン女王陛下からの、特命です」
…それって。
もしかして、かなり凄いことなのでは?
いつもの任務は、大抵魔導部隊隊長のシュニィから任命される。
今日の、線路お掃除任務もそうだった。
だけど、これは違う。
ルーデュニア聖王国王家の紋章が捺されている。
指令書にこの紋章が捺されているときは、つまり、女王陛下直々の特命を意味する。
こんな重要な指令書、初めて見た。
少なくとも、私みたいな悪い子に、こんな大事な指令書が回ってくるなんて、思ってもみなかった。
…それにしても。
「…私、一人で行くの?」
「えっ…。は、はい…そう…ですね」
私、一人…。単独の任務…。
…そんなの初めてだ。
「じゃあ、何でジュリスのところからお使いに来たの?これ、ジュリスの印も捺してあるけど…」
「あ、え、えぇと…。その、ジュリス大隊長は、この度の任務には同行しないとのことで…。あなたに委任するという形で…」
…そうなんだ。
もしかしたら、ジュリスはもう、私との任務は御免だと思ったのかも。
だから、判子だけついて、私に一人で行ってこい、って言ってるのかも。
…もうお前の面倒見るのはたくさんだって、ジュリス言ってたもんな。
…。
「そ、そういうことですから…。今回は、ベリクリーデ大隊長お一人で…。緊急の特命なので、誰にも他言無用、すぐにでも出発を…」
「…分かった」
私は、指令書を握り締めた。
そこには、ただちに東方都市トラーチェに向かうようにと書かれていた。
詳しい任務の詳細は、そこで伝えられる、と。
特命と言うからには、ギリギリまで内緒にしておきたいんだろう。きっと。
女王様の考えることは、私には分からない。
とにかく、行けば分かるということだ。
「すぐに出発するね」
「は、はい…。お願いします…」
アナベルは、私に指令書を渡し、一礼して。
そそくさと、まるで逃げるように去っていった。
そして、私も。
…この時間なら、まだトラーチェに向かう列車の最終便に間に合う。
すぐ行け、ってことだったし…。今すぐ動いた方が良いんだろう。
私は、誰に告げることもなく。
簡単に荷物をまとめ、こっそりと魔導部隊の隊舎を後にした。
いや、違う。
時刻は、既に午後10時を回っている。
以前午後9時頃、報告書出来たから取りに来てーと言ったら、「そんな時間に女性隊舎に行けるか」と怒られたことがあるから。
何でこんな時間だったら、ジュリスが来ちゃ駄目なのか分からないけど。
とにかく、だから多分ジュリスじゃない。
「誰?」
部屋の扉を開けると、そこには予想通り、ジュリスじゃなくて。
一人の若い女性魔導師が、白い封筒を持って立っていた。
あ、この人。
ジュリスの隊の人だ。
袖に巻いてる腕章の色で、どの大隊に所属する魔導師なのか判別出来る。
「あ、あの…夜分に失礼します。私、ジュリス大隊長の使いで、アナベル・ハードウィックと言います」
「…私に、何か用?」
「は、はい。ジュリス大隊長から、これを渡すようにと…」
アナベル・ハードウィックは、手に持っていた白い封筒を差し出してきた。
…?お手紙?
中を開けてみると、それはいつも、任務を申し付けられるときの指令書だった。
しかし、その指令書は、いつものものとは違っていた。
「これって…」
「は、はい…。あの…フユリ・スイレン女王陛下からの、特命です」
…それって。
もしかして、かなり凄いことなのでは?
いつもの任務は、大抵魔導部隊隊長のシュニィから任命される。
今日の、線路お掃除任務もそうだった。
だけど、これは違う。
ルーデュニア聖王国王家の紋章が捺されている。
指令書にこの紋章が捺されているときは、つまり、女王陛下直々の特命を意味する。
こんな重要な指令書、初めて見た。
少なくとも、私みたいな悪い子に、こんな大事な指令書が回ってくるなんて、思ってもみなかった。
…それにしても。
「…私、一人で行くの?」
「えっ…。は、はい…そう…ですね」
私、一人…。単独の任務…。
…そんなの初めてだ。
「じゃあ、何でジュリスのところからお使いに来たの?これ、ジュリスの印も捺してあるけど…」
「あ、え、えぇと…。その、ジュリス大隊長は、この度の任務には同行しないとのことで…。あなたに委任するという形で…」
…そうなんだ。
もしかしたら、ジュリスはもう、私との任務は御免だと思ったのかも。
だから、判子だけついて、私に一人で行ってこい、って言ってるのかも。
…もうお前の面倒見るのはたくさんだって、ジュリス言ってたもんな。
…。
「そ、そういうことですから…。今回は、ベリクリーデ大隊長お一人で…。緊急の特命なので、誰にも他言無用、すぐにでも出発を…」
「…分かった」
私は、指令書を握り締めた。
そこには、ただちに東方都市トラーチェに向かうようにと書かれていた。
詳しい任務の詳細は、そこで伝えられる、と。
特命と言うからには、ギリギリまで内緒にしておきたいんだろう。きっと。
女王様の考えることは、私には分からない。
とにかく、行けば分かるということだ。
「すぐに出発するね」
「は、はい…。お願いします…」
アナベルは、私に指令書を渡し、一礼して。
そそくさと、まるで逃げるように去っていった。
そして、私も。
…この時間なら、まだトラーチェに向かう列車の最終便に間に合う。
すぐ行け、ってことだったし…。今すぐ動いた方が良いんだろう。
私は、誰に告げることもなく。
簡単に荷物をまとめ、こっそりと魔導部隊の隊舎を後にした。


