「ったく、ミトンもつけずにトレイを触る奴があるか」
「だって、早く食べたかったんだもん」
「それで火傷したんじゃ、洒落にならないだろ」
「そんなの、大袈裟だよ。私魔導師だよ?こんな火傷、すぐに…」
「馬鹿」
そういう問題じゃないんだよ。
「治るからって、怪我して良い訳があるか。しかも火傷なんて。最悪、痕が残るんだぞ」
今回は、それほど酷くないから、綺麗に治るだろうが。
下手したら、一生モノの傷痕になるところだった。
女が、身体に残る傷を作るもんじゃねぇ。
「もっと気をつけろ。牛乳パックぶちまけるのも、洗剤ぶちまけるのも良いが、怪我はすんな」
「…ジュリス、怒ってる?」
「あぁ。怒ってるよ」
怪我したことに、じゃない。
怪我したことを、大したことないって言ってることに怒ってる。
「…ごめんなさい」
「…」
「私、いつも失敗して、ジュリスを怒らせるの。ごめんね」
「…いや」
充分回復魔法をかけて、俺は杖を収めた。
「言い過ぎた。別に、そんな怒ってねぇよ」
「でも、ちょっとは怒ってたでしょ?」
「まぁ…ちょっとだけな。でも、今謝ったから、もう怒ってねぇ」
ちゃんと反省してるなら、それで良い。
「痛くねぇか?」
「んー…。少しヒリヒリする」
「そうか、ちょっと待ってろ」
俺は、ジャケットの内ポケットに忍ばせていた、簡易救急セットを取り出した。
「ちょっと痛いかもしれないが、我慢してくれ」
「うん」
回復魔法はかけたから、大丈夫だと思うが。
小さい水ぶくれくらいには、なるかもしれないな。
俺はベリクリーデの指先に、軟膏を塗り付け。
専用の医療用テープを、患部に巻いた。
「痛むか?」
「ううん」
「しばらく巻いとけよ、それ。朝になってもまだ痛かったら言え」
「…」
「?どうした?」
やっぱり、まだ痛むのか?
「ジュリス、そんなの持ち歩いてるんだ。準備良いね」
「これぞ、備えあれば憂いなしだ。良い例だろ?」
「本当だ。ジュリス凄い」
実は、昔からいつも持ってる訳じゃない。
こういうものを持ち歩くようになったのは、ベリクリーデと行動を共にするようになってからだ。
何せ、普通に道を歩いてるだけで、うっかり溝に足を突っ込むほどの、おっちょこちょいぶりだからな。
対策は万全。
あとは、お前が気をつけてくれれば完璧なんだけどな。
「…」
じー、とテーピングされた指先を見つめるベリクリーデ。
「…何だよ?」
「ありがと、ジュリス」
「…あぁ、うん。ありがとは良いから、もう怪我しないでくれ」
こんな備え、しておいて良かったと思わない方がずっと良いんだから。
「だって、早く食べたかったんだもん」
「それで火傷したんじゃ、洒落にならないだろ」
「そんなの、大袈裟だよ。私魔導師だよ?こんな火傷、すぐに…」
「馬鹿」
そういう問題じゃないんだよ。
「治るからって、怪我して良い訳があるか。しかも火傷なんて。最悪、痕が残るんだぞ」
今回は、それほど酷くないから、綺麗に治るだろうが。
下手したら、一生モノの傷痕になるところだった。
女が、身体に残る傷を作るもんじゃねぇ。
「もっと気をつけろ。牛乳パックぶちまけるのも、洗剤ぶちまけるのも良いが、怪我はすんな」
「…ジュリス、怒ってる?」
「あぁ。怒ってるよ」
怪我したことに、じゃない。
怪我したことを、大したことないって言ってることに怒ってる。
「…ごめんなさい」
「…」
「私、いつも失敗して、ジュリスを怒らせるの。ごめんね」
「…いや」
充分回復魔法をかけて、俺は杖を収めた。
「言い過ぎた。別に、そんな怒ってねぇよ」
「でも、ちょっとは怒ってたでしょ?」
「まぁ…ちょっとだけな。でも、今謝ったから、もう怒ってねぇ」
ちゃんと反省してるなら、それで良い。
「痛くねぇか?」
「んー…。少しヒリヒリする」
「そうか、ちょっと待ってろ」
俺は、ジャケットの内ポケットに忍ばせていた、簡易救急セットを取り出した。
「ちょっと痛いかもしれないが、我慢してくれ」
「うん」
回復魔法はかけたから、大丈夫だと思うが。
小さい水ぶくれくらいには、なるかもしれないな。
俺はベリクリーデの指先に、軟膏を塗り付け。
専用の医療用テープを、患部に巻いた。
「痛むか?」
「ううん」
「しばらく巻いとけよ、それ。朝になってもまだ痛かったら言え」
「…」
「?どうした?」
やっぱり、まだ痛むのか?
「ジュリス、そんなの持ち歩いてるんだ。準備良いね」
「これぞ、備えあれば憂いなしだ。良い例だろ?」
「本当だ。ジュリス凄い」
実は、昔からいつも持ってる訳じゃない。
こういうものを持ち歩くようになったのは、ベリクリーデと行動を共にするようになってからだ。
何せ、普通に道を歩いてるだけで、うっかり溝に足を突っ込むほどの、おっちょこちょいぶりだからな。
対策は万全。
あとは、お前が気をつけてくれれば完璧なんだけどな。
「…」
じー、とテーピングされた指先を見つめるベリクリーデ。
「…何だよ?」
「ありがと、ジュリス」
「…あぁ、うん。ありがとは良いから、もう怪我しないでくれ」
こんな備え、しておいて良かったと思わない方がずっと良いんだから。


