…小一時間ほどたった後。
様々な犠牲(主に俺)を払って。
ようやく、チョコマフィンの焼き上がりを告げる音が、チンと鳴った。
「あ、ジュリス出来たよ」
「出来たな」
いやぁ、大変だったなぁ。
特に、床一面に広がった食器用洗剤を、綺麗に拭き取るの。
あれが一番大変だったよ。
どれくらい大変だったか、って?
やってみろよ。食器用洗剤、丸々一本床にぶちまけたら、どうなるか。
人によっては発狂モノだから。
それはともかく。
ようやく、マフィンが焼き上がった。
「やったー」
「え、ちょ、まっ…」
ベリクリーデは、ケーキを待ち切れない子供のように立ち上がって、オーブンを開け。
長時間、高温でじっくりと焼いて、熱くなったトレイを、素手で掴んだ。
「熱っ!!」
「馬鹿!」
床掃除が大変過ぎて、忘れていた。
こいつは何でもかんでも、行動が豪快過ぎるんだった。
熱くなったトレイを、ミトンもつけずに素手で触るとは。
釘を差しておくべきだった。そのまま触るなよって。
充分予測出来たことのはずなのに。
とにかく、起きてしまったことはどうしようもない。
「こっち来い」
俺は、火傷にびっくりしているベリクリーデを、ぐいっとシンクに引き寄せ。
急いで水道の蛇口を捻り、火傷した左手に、冷水を浴びせた。
「触ったのは左手だけか?」
「う、うん」
「そのままじっとして動くなよ。ちゃんと冷やさねぇと…」
両手で掴まなかっただけ、マシだが。
熱々のトレイを触ったせいで、ベリクリーデの左手の指先が、赤くなっていた。
幸い、それほど酷い火傷という訳ではなさそうだが。
でも、軽い火傷って訳でもない。
俺は、杖を取り出した。
「ジュリス?」
「良いから、そのまま動かすな。水で冷やしとけ」
ベリクリーデの、赤くなった指先に。
俺は、回復魔法をかけた。
「…!」
「痛いか?」
「ううん…。ジュリス、回復魔法も使えるんだね」
あ?
「あぁ…まぁ、長く生きてりゃ、大抵の魔法は使えるようになるよ」
ってか、今はそんなことどうでも良いだろ。
様々な犠牲(主に俺)を払って。
ようやく、チョコマフィンの焼き上がりを告げる音が、チンと鳴った。
「あ、ジュリス出来たよ」
「出来たな」
いやぁ、大変だったなぁ。
特に、床一面に広がった食器用洗剤を、綺麗に拭き取るの。
あれが一番大変だったよ。
どれくらい大変だったか、って?
やってみろよ。食器用洗剤、丸々一本床にぶちまけたら、どうなるか。
人によっては発狂モノだから。
それはともかく。
ようやく、マフィンが焼き上がった。
「やったー」
「え、ちょ、まっ…」
ベリクリーデは、ケーキを待ち切れない子供のように立ち上がって、オーブンを開け。
長時間、高温でじっくりと焼いて、熱くなったトレイを、素手で掴んだ。
「熱っ!!」
「馬鹿!」
床掃除が大変過ぎて、忘れていた。
こいつは何でもかんでも、行動が豪快過ぎるんだった。
熱くなったトレイを、ミトンもつけずに素手で触るとは。
釘を差しておくべきだった。そのまま触るなよって。
充分予測出来たことのはずなのに。
とにかく、起きてしまったことはどうしようもない。
「こっち来い」
俺は、火傷にびっくりしているベリクリーデを、ぐいっとシンクに引き寄せ。
急いで水道の蛇口を捻り、火傷した左手に、冷水を浴びせた。
「触ったのは左手だけか?」
「う、うん」
「そのままじっとして動くなよ。ちゃんと冷やさねぇと…」
両手で掴まなかっただけ、マシだが。
熱々のトレイを触ったせいで、ベリクリーデの左手の指先が、赤くなっていた。
幸い、それほど酷い火傷という訳ではなさそうだが。
でも、軽い火傷って訳でもない。
俺は、杖を取り出した。
「ジュリス?」
「良いから、そのまま動かすな。水で冷やしとけ」
ベリクリーデの、赤くなった指先に。
俺は、回復魔法をかけた。
「…!」
「痛いか?」
「ううん…。ジュリス、回復魔法も使えるんだね」
あ?
「あぁ…まぁ、長く生きてりゃ、大抵の魔法は使えるようになるよ」
ってか、今はそんなことどうでも良いだろ。


