生地を、全部型に入れてから。
あとは、オーブンに任せるだけ。
「その子が焼いてくれるの?」
「そうだよ」
「…杖じゃなくて大丈夫?ちゃんと焼ける?」
心配しなくても、お前の杖より立派に焼いてくれるよ。
さて。
「焼けるまで、片付けするぞ」
焼けたらすぐ、焼き立てを食べられるように。
片付けを、先に済ませておこう。
帰るまでが遠足、って言うだろう?
料理もそう。
片付けを済ませないことに、料理完成とは行かない。
「ボウルとゴムべら、あと皿とバット…洗うものはたくさんあるぞ」
「…それは?」
「ん?」
ベリクリーデは、怯えた顔で。
ハンドミキサーを、指差した。
「…あの拷問具も洗うの…?」
「…分かったよ。ハンドミキサーは俺が洗って片付けるから、お前は他のもの洗ってくれ」
あくまで、ハンドミキサーは拷問具にしか見えないか。そうか。
俺には、お前の杖の方がよっぽど恐ろしい凶器に見えるがな。
「包丁、落とさないように気をつけろよ」
「うん」
「…そういや、洗い方は知ってるよな?」
「そのくらい知ってるよ」
そりゃ良かった。
何せ、ボウルをボールと、バットをゴルフクラブと間違えるくらいだから。
皿洗いすら知らないのかと思ったよ。
じゃ、そっちは任せても良いかな。
幸い、今回の洗い物は全部、落としても割れるものじゃないし。
唯一落として危ないのは、包丁くらい。
それさえ気をつけてくれれば、問題ない。
俺はベリクリーデから目を離し、ハンドミキサーのビーターを洗う為、本体から引き抜いた。
すると。
「あ」
背後から、ベリクリーデの間抜けな声と。
何かが床に落っこちる音、そして、ビチャ、と液体らしき何かが、盛大に床にぶちまけられる音が聞こえた。
…うん。
聞こえなかったことにして良いかな。
…振り向きたくねぇ〜…!
全力で振り向きたくねぇ。
しかし。
「…ジュリス〜…」
情けない声で、俺を呼ぶベリクリーデの声を聞いてしまったら。
…振り返らない訳には、いかないよなぁ。
恐る恐る、振り向いてみると。
ベリクリーデの両手は、食器用洗剤の泡まみれで。
おまけに、ベリクリーデの足元一帯に、その食器用洗剤がぶちまけられ。
蓋の開いた洗剤の容器が、コロコロと床を転がっていた。
…。
…うん。
ベリクリーデ、お前は悪くない。
皿洗いくらいなら、任せても大丈夫だろう…なんて。
甘いことを考えた、俺が馬鹿だった。
あとは、オーブンに任せるだけ。
「その子が焼いてくれるの?」
「そうだよ」
「…杖じゃなくて大丈夫?ちゃんと焼ける?」
心配しなくても、お前の杖より立派に焼いてくれるよ。
さて。
「焼けるまで、片付けするぞ」
焼けたらすぐ、焼き立てを食べられるように。
片付けを、先に済ませておこう。
帰るまでが遠足、って言うだろう?
料理もそう。
片付けを済ませないことに、料理完成とは行かない。
「ボウルとゴムべら、あと皿とバット…洗うものはたくさんあるぞ」
「…それは?」
「ん?」
ベリクリーデは、怯えた顔で。
ハンドミキサーを、指差した。
「…あの拷問具も洗うの…?」
「…分かったよ。ハンドミキサーは俺が洗って片付けるから、お前は他のもの洗ってくれ」
あくまで、ハンドミキサーは拷問具にしか見えないか。そうか。
俺には、お前の杖の方がよっぽど恐ろしい凶器に見えるがな。
「包丁、落とさないように気をつけろよ」
「うん」
「…そういや、洗い方は知ってるよな?」
「そのくらい知ってるよ」
そりゃ良かった。
何せ、ボウルをボールと、バットをゴルフクラブと間違えるくらいだから。
皿洗いすら知らないのかと思ったよ。
じゃ、そっちは任せても良いかな。
幸い、今回の洗い物は全部、落としても割れるものじゃないし。
唯一落として危ないのは、包丁くらい。
それさえ気をつけてくれれば、問題ない。
俺はベリクリーデから目を離し、ハンドミキサーのビーターを洗う為、本体から引き抜いた。
すると。
「あ」
背後から、ベリクリーデの間抜けな声と。
何かが床に落っこちる音、そして、ビチャ、と液体らしき何かが、盛大に床にぶちまけられる音が聞こえた。
…うん。
聞こえなかったことにして良いかな。
…振り向きたくねぇ〜…!
全力で振り向きたくねぇ。
しかし。
「…ジュリス〜…」
情けない声で、俺を呼ぶベリクリーデの声を聞いてしまったら。
…振り返らない訳には、いかないよなぁ。
恐る恐る、振り向いてみると。
ベリクリーデの両手は、食器用洗剤の泡まみれで。
おまけに、ベリクリーデの足元一帯に、その食器用洗剤がぶちまけられ。
蓋の開いた洗剤の容器が、コロコロと床を転がっていた。
…。
…うん。
ベリクリーデ、お前は悪くない。
皿洗いくらいなら、任せても大丈夫だろう…なんて。
甘いことを考えた、俺が馬鹿だった。


