神殺しのクロノスタシス3

ようやく、液体類が混ざったので。

「次は粉を入れるぞ」

「!知ってるよ。小麦粉と薄力粉と強力粉と、片栗粉ととうもろこし粉をふるいにかけて、混ぜるんでしょ?」

小麦粉以外は全部外れだな。

あと、薄力粉と強力粉は両方小麦粉だ。

そしてその小麦粉に関しても、今回は外れ。

「薄力粉とベーキングパウダーを混ぜて作っても良いんだけどな。今回は面倒だから、ホットケーキミックスで代用だ」

手抜きは良くない、と言ったばかりだが。

今回は、万能ホットケーキミックスで作ることにした。

俺も、最初は薄力粉とベーキングパウダーを手に持ってたんだけど。

あいつにこんなものを渡したら、袋ごと床にぶちまけるか、ふるいにもかけず、分量も量らずぶち込んで、粉まみれにするか。

そのどっちかになるだろうと思って、やめた。

実際、牛乳ですらぶちまけてる有り様なんだから。

薄力粉買わずに正解だった。

今頃、俺もベリクリーデも調理台も、粉まみれで真っ白になってるところだった。

怖っ。

その点、ホットケーキミックスなら…。

「そうなの?じゃ、これを入れれば良いんだね」

ガシッ、とホットケーキミックスの袋を掴むベリクリーデ。

危なっ。

「待て。落ち着け。良いか?分量を量れ。お前は一度、秤を使うということを覚えろ」

「…?」

首を傾げるな。

俺は秤の上にラップを敷き、そこに少しずつ、レシピ通りの分量になるまで、粉を乗せていった。

「な?こうすると分量がよく分かるだろ」

「本当だ。これで、粉が何トンになったか分かるね」

トンまで計れる秤があって堪るか。

何人規模で、何人分の何を作ろうとしてるんだ、お前は。

「はい、これで分量通り。これを、さっきのチョコのボウルに混ぜる訳だが」

「うん任せてー」

「任せられるか」

俺は、早速ホットケーキミックスを、ドサッとぶち込もうとするベリクリーデの手を、ガシッと掴んで止めた。

こいつの行動パターンが、段々分かってきたぞ。

「ゆっくり入れろ。な?軽くかき混ぜながら、そーっと入れろ」

「…そーっと?」

「そうだ。そーっと入れろ」

「分かった」

よし。

これで、ホットケーキミックスぶちまけて真っ白、は避けられるな。

と思ったら。

「…」

ベリクリーデは、小指の先程の粉を摘んでは、ボウルに入れ。

また小指の先程の粉を摘んでは入れ、摘んでは入れを繰り返していた。

違う、そうじゃない。
 
そーっと入れろとは言ったが、そこまでしろとは言ってない。

日が暮れるっての。

何で、こいつは何でもかんでもこう、極端なんだ?

「もう少し豪快に入れても良いよ…」

「?でも、そーっと入れろって」

「そうだな。でもそのペースだと、牛乳冷めるから」

俺が代わりに、サラサラとホットケーキミックスをボウルに注ぐように入れた。

これで良し。

あとはこれを、さっくりとかき混ぜる。

これで、ようやく生地が完成した。