神殺しのクロノスタシス3

充分卵が泡立ったので。

「次は、牛乳を温めるからな」

「!それなら私出来るよ」

「ちょっと待て。杖を出すなと何度言えば分かる」

温める、って言ったろうが。

燃やせ、とは一言も言ってねぇ。

「小鍋に入れて温めるんだよ」

「うん」

すると、ベリクリーデは。

新品の牛乳パックを、自慢の握力で引き千切って開けた。

この馬鹿。

盛大に飛び散る牛乳。勿体無い。

「馬鹿!」

「いたっ」

思わず、ベリクリーデの頭を引っ叩いた。

そんな開け方をする奴があるか。

「ジュリスがぶったぁ…」

ぶつだろ。

「開け口があるだろ、開け口が!誰が力任せに開けろと言った」

「ジュリスがぶったよ〜…」

…。

「あー、はいはい。俺が悪かったよ」

「痛かった」

さっき引っ叩いた、ベリクリーデの後頭部を撫でてやった。

咄嗟のこととはいえ、女を叩いのは悪かった。

「そうだな。手を出しちゃいかんな。ごめんな」

「ハエが頭にぶつかってきたくらい痛かった」

ノーダメージじゃねぇかこの野郎。

「まぁ、開けちまったもんは仕方ない。ベリクリーデ、小鍋に牛乳を入れてくれ。計量カップではかっ、」

「分かった」

どぱっ。

「は!?お前最後まで人の話を聞け!」

「?」

俺は、慌ててベリクリーデの手を止めた。

あろうことか奴は、牛乳パックを片手で掴み。

目分量で、豪快にぶち込みやがった。

計量カップで計れって言ったろうが!

あっという間に、小鍋が溢れ返らんばかりの牛乳がなみなみ。

溢れなくて良かった。

ってか、こんなに使わねぇっての。

「ったく、言わんこっちゃない…」

幸い、まだ火は入れてないし。

俺は計量カップで牛乳を掬い、別の容器に移した。

ベリクリーデが、牛乳パックの開け口をぐちゃぐちゃ開けたもんだから、パックに戻すことも出来ない。

まぁ、牛乳なんてよく使うものだし、何ならそのまま飲んでも良いし。

問題な…いやあるけど。問題ないということにしておこう。

で、この牛乳を火にかける。

「ベリクリーデ、さっき刻んだチョコ、持ってきてくれ」

「はーい」

さっき、横に置いておいたチョコのぶつ切り入りボウルを持ってくる。

そこに、温めた牛乳を投入。

軽くかき混ぜて、牛乳の熱でチョコを溶かす。

こんなもんかな。

で。

「ベリクリーデ、ここにさっきの卵、入れてくれ」

「うん、拷問受けた卵だよね?」

その言い方やめろ。

「はい、どーぞ」

「ちょ、おまっ!もうちょっと優しく入れろ!飛び散るだろ」

何でお前は何でもかんでも。

液体を投入するときは、必ずバケツをひっくり返したような入れ方をするんだ。

豪快にも程があるだろ。