次。
卵をボウルに入れたので。
「よし、お次はこれの出番だ」
さっき、ベリクリーデが山程出してきた調理器具のうちの、一つ。
ハンドミキサーである。
便利だよな、これ。
さっき、手抜きは良くない、って言ったけど。
ハンドミキサーに関しては、これはあった方が良いと思う。
今回は卵を混ぜるだけだが、生クリームを泡立てるのに、わざわざ泡立て器でカシャカシャ混ぜてたら。
あれ、かなりの重労働なんだよ。やったことある人なら、分かると思うけど。
特に夏場は、ボウルの下に氷水を浸けてたとしても、すぐ溶けてしまうからな。
結構、根気のいる作業になる。
そこに、このハンドミキサー。
これは文明の利器だと思うよ。
しかし。
「…それ何?」
ベリクリーデ、ハンドミキサーを知らない。
お前が出してきたんじゃないのか。
さては、用途も分からず、とりあえず何でも引っ張り出してきただけだな?そうなんだな?
お前はそういう奴だよ。
「まずは電源を入れて…」
最近は、コードレスのハンドミキサーもあるらしいが。
残念ながら、ここにあるのはコード付きのハンドミキサーだけなので。
電源にコードを繋いで、スイッチオン。
本体に接続された二本のビーターが、高速回転を始めた。
それを見たベリクリーデ、ぎょっとして後ずさった。
「ジュリス、それ危ない、危ないよ」
「ん?あぁ…まぁ、触っちゃ駄目だぞ」
あくまでも、持ち手を掴んで使用。
使わないときは、きちんと電源を消す。
それさえ守ってれば大丈夫。
なのに。
ベリクリーデは、何を勘違いしたのか。
「ごめんなさい、ジュリス」
「は…?」
いきなり、謝罪してきた。
何?何に対する謝罪?
もう、お前には今まで、散々色々な迷惑と心配をかけられてきたから。
今更謝罪されても、何一つチャラにはならないんだが。
「だって、ジュリス、怒ってるんでしょ?」
ベリクリーデは、怯えた目をして俺を…俺をって言うか、ハンドミキサーを見つめていた。
…一体どうしたんだ。
「怒る…?俺が?何で?」
「でなきゃ、そんな怖い拷問具使ったりしないでしょ?それで私の目玉を抉るんでしょ?」
ハンドミキサー持ったまま、ずっこけるかと思った。
危ねぇ。
どうやらハンドミキサーを、拷問具だと勘違いしたらしい。
ちげーよ。
「あのなベリクリーデ…。これは拷問具じゃない」
「だって、凄い回ってる。それで目を潰すんでしょ?」
「潰さねぇよ…」
凄い発想だな。
確かに、初見だと怖そうな道具に見える…の、かもしれないけど。
あくまで、泡立て器の進化版だから。
「ジュリスごめんね。目玉ドリルは許して」
後ずさり、俺から距離を取るベリクリーデ。
アホだ。
「目玉ドリルじゃねぇ。これはハンドミキサー。ほら、こうやって使うんだよ」
俺は、ハンドミキサーをボウルの中の卵に突っ込んだ。
卵を泡立てるのに使うんだよ。
「…」
俺が怒っている訳ではないと判断したのか。
ベリクリーデは、恐る恐る近づいてきた。
そして、ボウルの中で泡立てられている卵を見て、一言。
「…ジュリスが、卵を拷問してる」
酷い言いがかりだ。
何度も言うが俺は、卵を泡立ててるだけだからな。
「ジュリス怒ってる?」
「怒ってねぇよ」
「私の目玉潰さない?」
「…潰さねぇよ…」
あのな、普段から、お前には色々と振り回されてばかりいるが。
だからって、腹いせに目玉潰してやろう、って思うほど憎い相手なら。
そんな奴、さっさと見切りつけて、関わり合いにもならねぇよ。
ましてや、わざわざこちらから、一緒にチョコ作りなんて提案したりしない。
お前は確かに、突拍子もないことをするし、常識には欠けるし、世話もかかるし手間もかかるが。
それでも、毎回「仕方ねぇなぁ」で許してしまえるのは。
お前に、悪意ってものが欠片もないと分かってるからだ。
俺に嫌がらせしてやろうとして、わざと俺の手を煩わせようとしてる訳じゃないだろ。
ただ単に、無知で世間知らずなだけ。
だから、怒るに怒れないんだよ。
「危なくねぇから、ちゃんと傍にいろ」
「…うん」
目玉を抉られる訳じゃない、と納得したのか。
ベリクリーデは、卵を泡立てる俺を、隣でじっと眺めていた。
卵をボウルに入れたので。
「よし、お次はこれの出番だ」
さっき、ベリクリーデが山程出してきた調理器具のうちの、一つ。
ハンドミキサーである。
便利だよな、これ。
さっき、手抜きは良くない、って言ったけど。
ハンドミキサーに関しては、これはあった方が良いと思う。
今回は卵を混ぜるだけだが、生クリームを泡立てるのに、わざわざ泡立て器でカシャカシャ混ぜてたら。
あれ、かなりの重労働なんだよ。やったことある人なら、分かると思うけど。
特に夏場は、ボウルの下に氷水を浸けてたとしても、すぐ溶けてしまうからな。
結構、根気のいる作業になる。
そこに、このハンドミキサー。
これは文明の利器だと思うよ。
しかし。
「…それ何?」
ベリクリーデ、ハンドミキサーを知らない。
お前が出してきたんじゃないのか。
さては、用途も分からず、とりあえず何でも引っ張り出してきただけだな?そうなんだな?
お前はそういう奴だよ。
「まずは電源を入れて…」
最近は、コードレスのハンドミキサーもあるらしいが。
残念ながら、ここにあるのはコード付きのハンドミキサーだけなので。
電源にコードを繋いで、スイッチオン。
本体に接続された二本のビーターが、高速回転を始めた。
それを見たベリクリーデ、ぎょっとして後ずさった。
「ジュリス、それ危ない、危ないよ」
「ん?あぁ…まぁ、触っちゃ駄目だぞ」
あくまでも、持ち手を掴んで使用。
使わないときは、きちんと電源を消す。
それさえ守ってれば大丈夫。
なのに。
ベリクリーデは、何を勘違いしたのか。
「ごめんなさい、ジュリス」
「は…?」
いきなり、謝罪してきた。
何?何に対する謝罪?
もう、お前には今まで、散々色々な迷惑と心配をかけられてきたから。
今更謝罪されても、何一つチャラにはならないんだが。
「だって、ジュリス、怒ってるんでしょ?」
ベリクリーデは、怯えた目をして俺を…俺をって言うか、ハンドミキサーを見つめていた。
…一体どうしたんだ。
「怒る…?俺が?何で?」
「でなきゃ、そんな怖い拷問具使ったりしないでしょ?それで私の目玉を抉るんでしょ?」
ハンドミキサー持ったまま、ずっこけるかと思った。
危ねぇ。
どうやらハンドミキサーを、拷問具だと勘違いしたらしい。
ちげーよ。
「あのなベリクリーデ…。これは拷問具じゃない」
「だって、凄い回ってる。それで目を潰すんでしょ?」
「潰さねぇよ…」
凄い発想だな。
確かに、初見だと怖そうな道具に見える…の、かもしれないけど。
あくまで、泡立て器の進化版だから。
「ジュリスごめんね。目玉ドリルは許して」
後ずさり、俺から距離を取るベリクリーデ。
アホだ。
「目玉ドリルじゃねぇ。これはハンドミキサー。ほら、こうやって使うんだよ」
俺は、ハンドミキサーをボウルの中の卵に突っ込んだ。
卵を泡立てるのに使うんだよ。
「…」
俺が怒っている訳ではないと判断したのか。
ベリクリーデは、恐る恐る近づいてきた。
そして、ボウルの中で泡立てられている卵を見て、一言。
「…ジュリスが、卵を拷問してる」
酷い言いがかりだ。
何度も言うが俺は、卵を泡立ててるだけだからな。
「ジュリス怒ってる?」
「怒ってねぇよ」
「私の目玉潰さない?」
「…潰さねぇよ…」
あのな、普段から、お前には色々と振り回されてばかりいるが。
だからって、腹いせに目玉潰してやろう、って思うほど憎い相手なら。
そんな奴、さっさと見切りつけて、関わり合いにもならねぇよ。
ましてや、わざわざこちらから、一緒にチョコ作りなんて提案したりしない。
お前は確かに、突拍子もないことをするし、常識には欠けるし、世話もかかるし手間もかかるが。
それでも、毎回「仕方ねぇなぁ」で許してしまえるのは。
お前に、悪意ってものが欠片もないと分かってるからだ。
俺に嫌がらせしてやろうとして、わざと俺の手を煩わせようとしてる訳じゃないだろ。
ただ単に、無知で世間知らずなだけ。
だから、怒るに怒れないんだよ。
「危なくねぇから、ちゃんと傍にいろ」
「…うん」
目玉を抉られる訳じゃない、と納得したのか。
ベリクリーデは、卵を泡立てる俺を、隣でじっと眺めていた。


