神殺しのクロノスタシス3

「ほい、じゃまたチョコレート刻んでくれ」

「うん」

二回目だから、ちょっとは上手くなったかなと思ったが。

やっぱりぶつ切りだった。

わざと…わざとやってるんじゃないよな?

まぁ、故意に嫌がらせするような奴ではないから。

多分、いや間違いなく、天然でやってる。

ちなみにその間に、俺はオーブンの用意をしておく。

ベリクリーデに、予熱しておいてくれ、って言ったら。

「うん分かった」って言って、オーブンを爆破しかねないからな。

絶対やりかねない。もう自信がある。

だから、ここは俺がやっとく。

すると。

「出来た、ジュリス」

「あぁ」

「またお湯に入れるの?」

だから、お湯に入れるんじゃねぇっての。

「いや、今度は湯煎しない。ひとまず、そのチョコは横に置いとけ」

「分かったー」

「俺の横に置くなよ」

そういう意味じゃねぇよ。

とりあえず、刻んだ(正しくは、ぶつ切り)チョコをボウルに入れ、調理台の端に置き。

お次は。

「ベリクリーデ、お前卵割れるか?」

「割る…?大丈夫任せて」

「あぁ、はいはい分かった。聞いた俺が馬鹿だった。俺が割るから」

こいつの場合、割る(物理)だからな。

殻ごとぐっちゃぐちゃにする未来が見えたので、俺がやろう。

大体、チョコレートをぶつ切りにする奴が、卵を割るなんて繊細な作業が出来るはずがない。

これが、卵黄と卵白に分けろ、なんて面倒臭いレシピじゃなくて良かった。

まず、卵黄と卵白の説明から始めなければならないところだった。

「私、ちゃんと割れるよ?握力70あるから」

「やっぱり分かってないじゃないか。ってか強ぇなおい」

りんご割れるんじゃね?

「りんご潰しといて」って言ったら、めちゃくちゃ頼りになりそう。

しかし、そうじゃない。

俺は、握り潰せとは一言も言ってない。

「卵は俺がやるから、お前はボウル用意してくれ」

「…?何のボール?バスケ?」

「だからそっちじゃなくて、料理のボウル。料理の」

「分かったー」

…はぁ…。

幼稚園児。あれは幼稚園児。

自分にそう言い聞かせて、ベリクリーデがボウルを取ってる間に、冷蔵庫から卵を取り出す。

「ジュリス、ボウル取ってきた」

「おー、ありが…ってお前、それザルじゃねぇか」

形状は合ってる。

しかし、俺は穴の開いてないものを希望する。

「ザル?」

「…」

自分で取ってきた方が早かった案件。

これじゃ料理の練習にならないが、こいつの場合まず、調理器具の説明から始めなきゃならないからな。

日が暮れるわ。

自分でボウル持ってきて、自分で卵を割り入れる。

「わー。ジュリス器用だね〜」

「お前が不器用過ぎるだけだ」

「えへへ」

「いや、褒めてはねぇよ」

何で照れてんの?