神殺しのクロノスタシス3

なんとか、口を挟まずチョコレートを刻み(?)終わり。

お次の工程は。

「次は湯煎だな」

「湯煎!湯煎なら知ってるよ」

ドヤ顔やめろ。

「まずお湯を沸かして、お湯の中にチョコレートを、」

「やめろ馬鹿。早まるな!」

折角買ってきたチョコレートを、無駄にする気か。

こいつは、湯煎というものを分かっていない。

何となくのイメージで料理作ってるだろ。

才能のある人なら、何となくのイメージで料理作って、それなりに美味しいものが出来上がる人もいるが。

お前みたいなぶきっちょが、イメージで料理を作ったらどうなるか。

前回出来上がったものを、思い出してみろ。

あれの再来。

俺が監督しているからには、絶対あんなものを錬成させたりはしない。

「?違うの?」

「違う。湯煎っていうのはな、こうして、お湯の上にボウルを浮かべて…」

刻んだチョコレートを耐熱ボウルに入れ、熱いお湯を張ったバットの上に浮かべた。

よし。

「こうして、お湯の熱でゆっくり、間接的に溶かすんだ。ゴムべらで混ぜながらな」

「…?何でそんなことするの?普通に燃やして溶かせば良いのに」

お前の場合、溶かすと言うより、炭化させてただろ。

そうじゃないんだよ。

皆も思うよな。こんなのレンジでチンすれば溶けるのに、何でこんな面倒臭い方法で溶かさなきゃならないんだ、って。

大抵の手作りチョコレートのレシピは、湯煎で溶かしましょう、って書いてあるもんな。

お湯張ってボウル乗せて、お湯が冷めたらまた温め直して〜、とか。

面倒臭いよな。それは分かる。その気持ちは。

でもな、駄目なんだよ。

レシピに湯煎しろって書いてあるからには、それ相応の理由があるんだ。

湯煎して溶かさなければ、美味しく出来ないという理由が。

「良いか?ベリクリーデ。湯煎で溶かすと、チョコレートがダマにならずに、なめらかに溶けるんだ。風味も良くなるんだよ」

「…ふーん…」

「だから、ここは丁寧にやらないといけないんだ。お菓子作りってのはそういうもんだよ。面倒臭い手間を惜しまず、きちんとやったら、相応のものが出来るんだ」

よく、手抜きレシピ、とか。

簡単時短レシピ、とかあるけど。

ことさら菓子作りにおいては、そういう手抜きレシピは、俺は推奨しない。

そりゃあ、手を抜いても、それなりに美味しいものは出来るが。

やっぱり、きちんと裏ごしして、きちんと時間をかけてじっくり焼いて、と。

昔ながらの、面倒臭いやり方でやった方が。

簡単レシピより、美味しいものが出来上がる。

かけた手間暇は、決して裏切らないって訳だ。

あ、これあくまで俺の持論だから。文句ある人は従う必要ないぞ。

とにかく、今は俺の主導のもと、調理を進めているので。

あくまで、俺のやり方でやってもらうぞ。

「ほら、少しずつ溶けてきただろ?」

「ほんとだ。面白いね」

ベリクリーデに、ゴムべらを渡してやると。

粘土か何かでも与えられた子供のように。

くちゃくちゃと、楽しそうにボウルの中のチョコレートを混ぜていた。

よし。それで良い。