神殺しのクロノスタシス3

片付けが終わり。

ようやく、チョコ作り開始。

はぁ、既に疲れた。

でも、本番はこれからなんだよな。

「はい、まずはこれが材料だ」

「…」

俺は、買ってきた材料を調理台の上に並べた。

チョコ作りと言っても、色々あるが。

今回は、初心者でも簡単に作れるレシピを用意した。

「よし、まずは…」

製菓用チョコを包丁で刻んで…。

と、思っていると。

ベリクリーデが、袋詰めされた製菓用チョコを、じーっと見つめていた。

「…どうした?」

何か言いたそうな顔だが。

「ジュリス、出来てるよ」

「は?何が?」

「チョコ。もう出来てる」

製菓用チョコを指差して、そう言われた。

「…」

俺は、何て返せば良いんだ?

「ジュリスったら、おっちょこちょいだね。チョコ手作りするのに、完成したチョコ買ってきちゃうなんて。ジュリスでもうっかりすることあるんだね〜」

「おい待て。俺がおっちょこちょい呼ばわりされるのは気に食わん。仮に言われたとしても、お前にだけは言われたくない」

チョコ作ろうとして、コーヒー豆買ってきた奴に言われたくねぇ。

ふざけんな。

「あのなベリクリーデ。普通、一般的に、この国で『手作りチョコ』と呼ばれる食べ物は、ほぼ全て、この製菓用チョコレートを溶かして、固めたもののことを言うんだ」

「…」

製菓用じゃなくても、まぁ、板チョコとかさ。

市販の普通のチョコを買ってきて、それを湯煎で溶かして、色んな味をつけたりトッピングしたり。

それが、一般的な「手作りチョコ」だ。

ルーデュニア聖王国は、残念ながらカカオ豆原産国ではないからな。

例えカカオ豆が目の前にあったとしても、そこからチョコレートを作ろうと思ったら、一日仕事じゃ済まんぞ。

だから一般的なルーデュニア国民は、こうして製菓用のチョコレートを買ってきて。

それを溶かして加工して、「手作りチョコ」と定義しているのだ。

その定義を崩されると、チョコ作りが始まらんぞ。

「…でも、それじゃ手作りチョコじゃないよね。買ってきたのを、溶かして固めるのが手作り?アイスクリーム買ってきて、溶かしてまた凍らせたのを、『手作りアイス』って言ってるのと変わんないよ」

屁理屈こねてんじゃねぇぞこの野郎。

「だから、溶かして加工すんだよ!普通のチョコじゃなくて、これを溶かしてトリュフチョコを作るんだ」

「!」

分かったか?

それなら、手作りチョコと言っても良いだろう。

「トリュフのチョコ作るの?」

「あぁ」

オーソドックスだし、バレンタインチョコの定番。

かつ、材料も少なく済むし、初心者でも作りやすい。

それに、簡単な割に美味しいしな。

「…!」

何故か、ベリクリーデの顔が輝いていた。

…どうしたんだよ。

「凄いね、トリュフだって。私知ってるよ。豚が探すキノコだ」

あっ。

そう。そっちか。そっちな。はいはい。

お前はそういう奴だな。

「このチョコレートが、豚さんのキノコになるなんて…。手作りって凄いね、料理って凄い。錬金術師だ」

それはお前だろ。

「…一応言っとくが」

「?」

「トリュフとトリュフチョコは別物だぞ」

「!」

ごめんな、なんか変な期待させて。

チョコはキノコにはならない。

3大珍味のアレとは、また別物なんだよ。

「…」

ちょっとしょんぼりすんなよ。

トリュフ食べたかったのか?

「とにかく、始めるぞ」

「うん」

心配するな、トリュフチョコも、それなりに美味いから。