神殺しのクロノスタシス3

調理台の上には、山のような調理器具が並んでいた。

ミキサー、ハンドミキサー、フードプロセッサー、泡立て器にザル、秤などは勿論のこと。

それどころか。

何処の牛を屠殺するつもりなのか、屠殺用のフックやワイヤー、ゴツい肉切り包丁まで。

何故か、バレーボールやバスケットボール、ラグビーボール、ゴルフボールに加え。

木製バット、金属バット、ゴルフクラブ、巨大な棍棒なんかも用意してあった。

…?

俺、チョコ作りするから道具用意しといてくれ、ってメモ渡したよな。

俺がメモに書いたのは、

ボウル、バット、ゴムべら、濾し器、秤、泡立て器。

これだけなんだが?

運動会か何かでも始めんの?

およそ調理室に必要ないものが、大量に用意されている。

俺の知ってるチョコ作りと違う。

俺が呆然と立ち尽くしていると、ベリクリーデは、何を勘違いしたか。

「私、ちゃんと用意したよ。頑張ったでしょ?」

謎のドヤ顔。

意味の分からないものを収集してこい、と命じた結果がこれなら、ドヤ顔しても良いけど。

俺の渡したメモ、何の役にも立ってない。

とりあえず。

「…ベリクリーデ」

「なぁに?」

ツッコみたいところは、山のようにあるが。

まず一つずつ潰していこうか。

「誰が肉を屠殺するって言った?何で屠殺用の道具があるんだ」

「チョコにお肉入れたら、美味しいかなって思って」

成程。

ベリクリーデなりに、チョコレートに隠し味を入れたかった訳だな。

まぁ世界は広いから、中には、「肉入りチョコうめぇ!」って思う奴もいるかもしれん。

しかし。

俺は冗談じゃねぇ。

誰が食うか。

しかも、せめて普通のパック入りの肉買ってこいよ。

何で、丸々一匹屠殺する気満々で用意してんだよ。

この隊舎で出来ることじゃねーだろ。

「悪いが、それは使わん。撤去だ」

「えー」

「えーじゃねぇ。撤去しろ」

「うん、分かった」

とりあえず、物騒な器具は片付けさせた。

しかし、まだまだ奇天烈なものは大量に残っている。

まず気になるのは、この、運動会でもすんのかと思うほどの、大量のボール。  

バレーボール、バスケットボール、ラグビー、ゴルフ、野球、卓球、何でも出来そうなくらい、各種球技のボールが揃っている。

これは何なんだ。

「このボールの山は何なんだ?」

「え?だって、ジュリスが用意しろって」

「俺がいつスポーツするって言ったよ?俺は料理をするって言ったんだぞ」

「うん。だからおかしいなぁって思ったけど、でもジュリスがメモに、ボールって書いてたから」

ボール…。

…。

…分かってしまった。

彼女が何を考えて、こんなものを用意したのか分かった。

俺は、料理用の「ボウル」を用意して欲しかったんだがな。

ベリクリーデは、スポーツで使う「ボール」を用意してしまった訳だ。

しかも、ボールの方がめちゃくちゃ種類多いから、余計に。

分かるよ。うん。発音一緒だもんな。紛らわしいよな。

あれだ、ほら。

バレーボールのバレーと、踊る方のバレエの区別がつきにくいのと一緒。

だからって、調理で使うと分かっていながら、まさかスポーツのボールを用意するとは思わなかったよ。