…もう既に、ツッコミどころが色々あるが。
とりあえず、誰かに連れ去られた訳ではないと分かって。
そこは、安心したのだけど。
…それは置いといて。
あいつ、何やってんの?
それから。
…俺の心配を返せ。
「…おいコラ!ベリクリーデ!」
窓から奴の名前を呼ぶと、
「!」
ベリクリーデは、いきなり呼ばれて驚いたのか。
びくっ、としてこちらを振り返り。
その弾みで、彼女がしがみついていた枝が、ピキピキ、と危うい音を立てた。
やばっ…。
「おい!すぐそこから降り…」
警告しようとしたが、時は既に遅かった。
ベリクリーデがしがみついていた枝は、その重さに耐えられず。
そして。
バキッ、と音を立てて、折れた。
当然、その枝にしがみついていたベリクリーデも一緒に、地面に落下。
「あれー」
落っこちてる途中で、ベリクリーデの一言。
あれーじゃねぇよ馬鹿!
「くそっ!」
俺は、咄嗟に窓から飛び降りた。
だが、この高さ、この距離では、俺より先に、ベリクリーデの方が地面に叩きつけられる。
ならば。
俺は窓枠を蹴る瞬間、力魔法で足をバネのように加速させ、ベリクリーデの落下速度より早く、地面に着地し。
ひゅーん、と落っこちてきたベリクリーデを、すんでのところでスライディングキャッチした。
力魔法で加速をかけたとき、反動で窓枠が歪んだかもしれないが。
やむを得ない。
とにかく、ベリクリーデの落下は阻止した。
危ないところだった。
「大丈夫か!?」
「…」
ベリクリーデは、驚いた表情のまま無言だった。
上手くキャッチしたつもりだったが。
まさか、何処か怪我をし…、
すると。
「…」
何を思ったか、ベリクリーデは。
自分がしがみついていた枝の先に、ひょいっと手を伸ばし。
そこに実っていたどんぐりを一つ、もぎ取り。
こちらに、渡してきた。
「はい」
「…」
…俺はたった今、木から落っこちたベリクリーデを、すんでのところで助けた訳だが。
その見返りとばかりに、どんぐりを渡されてしまった。
どう反応すれば良いんだ?
「…何これ」
「どんぐり」
それは見たら分かる。
「そうじゃなくて、何でどんぐりなんだ」
「美味しいかなと思って」
既についていけない。
「分かった。順を追って説明してもらおう。朝起きて、お前はまず一番に何をした?」
「カーテン開けて、窓の外を見た」
そうか。
そこまでは正解だな。
朝、太陽の光を浴びるのは良いことだぞ。
「そしたら、下の木に、どんぐりがなってるのが見えて」
そうか。
そろそろそんな季節だもんな。
「で、取ろうと思ったの」
何で?
よく見たらベリクリーデ、パジャマのままだし。
どんぐりに興味を持つのは、百歩譲って良いとして。
まずは着替えろよ。
「窓開けて、木に飛び移ったまでは良かったんだけど…」
良くねぇよ。
まず着替えろ。それから木に飛び移るな。
「どんぐりになかなか手が届かなくて、どうしようかなって思ってたら」
「…俺に名前を呼ばれて、びっくりして落っこちた訳だな?」
「そうなの。よく分かったねジュリス」
分かりたくなかったよ畜生。
つまり、俺の心配や不安は、全くの無意味で。
こいつはただ、窓を開けて「あ、どんぐりだ!」と衝動的に木に飛び移り。
どんぐり収穫しようとして、落下した訳だな。
朝っぱらから、スライディングキャッチで背中を泥で汚し。
何ならちょっと腕を擦りむいてまで、ベリクリーデを助けた俺の犠牲は、何だったんだ?
とりあえず、誰かに連れ去られた訳ではないと分かって。
そこは、安心したのだけど。
…それは置いといて。
あいつ、何やってんの?
それから。
…俺の心配を返せ。
「…おいコラ!ベリクリーデ!」
窓から奴の名前を呼ぶと、
「!」
ベリクリーデは、いきなり呼ばれて驚いたのか。
びくっ、としてこちらを振り返り。
その弾みで、彼女がしがみついていた枝が、ピキピキ、と危うい音を立てた。
やばっ…。
「おい!すぐそこから降り…」
警告しようとしたが、時は既に遅かった。
ベリクリーデがしがみついていた枝は、その重さに耐えられず。
そして。
バキッ、と音を立てて、折れた。
当然、その枝にしがみついていたベリクリーデも一緒に、地面に落下。
「あれー」
落っこちてる途中で、ベリクリーデの一言。
あれーじゃねぇよ馬鹿!
「くそっ!」
俺は、咄嗟に窓から飛び降りた。
だが、この高さ、この距離では、俺より先に、ベリクリーデの方が地面に叩きつけられる。
ならば。
俺は窓枠を蹴る瞬間、力魔法で足をバネのように加速させ、ベリクリーデの落下速度より早く、地面に着地し。
ひゅーん、と落っこちてきたベリクリーデを、すんでのところでスライディングキャッチした。
力魔法で加速をかけたとき、反動で窓枠が歪んだかもしれないが。
やむを得ない。
とにかく、ベリクリーデの落下は阻止した。
危ないところだった。
「大丈夫か!?」
「…」
ベリクリーデは、驚いた表情のまま無言だった。
上手くキャッチしたつもりだったが。
まさか、何処か怪我をし…、
すると。
「…」
何を思ったか、ベリクリーデは。
自分がしがみついていた枝の先に、ひょいっと手を伸ばし。
そこに実っていたどんぐりを一つ、もぎ取り。
こちらに、渡してきた。
「はい」
「…」
…俺はたった今、木から落っこちたベリクリーデを、すんでのところで助けた訳だが。
その見返りとばかりに、どんぐりを渡されてしまった。
どう反応すれば良いんだ?
「…何これ」
「どんぐり」
それは見たら分かる。
「そうじゃなくて、何でどんぐりなんだ」
「美味しいかなと思って」
既についていけない。
「分かった。順を追って説明してもらおう。朝起きて、お前はまず一番に何をした?」
「カーテン開けて、窓の外を見た」
そうか。
そこまでは正解だな。
朝、太陽の光を浴びるのは良いことだぞ。
「そしたら、下の木に、どんぐりがなってるのが見えて」
そうか。
そろそろそんな季節だもんな。
「で、取ろうと思ったの」
何で?
よく見たらベリクリーデ、パジャマのままだし。
どんぐりに興味を持つのは、百歩譲って良いとして。
まずは着替えろよ。
「窓開けて、木に飛び移ったまでは良かったんだけど…」
良くねぇよ。
まず着替えろ。それから木に飛び移るな。
「どんぐりになかなか手が届かなくて、どうしようかなって思ってたら」
「…俺に名前を呼ばれて、びっくりして落っこちた訳だな?」
「そうなの。よく分かったねジュリス」
分かりたくなかったよ畜生。
つまり、俺の心配や不安は、全くの無意味で。
こいつはただ、窓を開けて「あ、どんぐりだ!」と衝動的に木に飛び移り。
どんぐり収穫しようとして、落下した訳だな。
朝っぱらから、スライディングキャッチで背中を泥で汚し。
何ならちょっと腕を擦りむいてまで、ベリクリーデを助けた俺の犠牲は、何だったんだ?


