神殺しのクロノスタシス3

「…どっこ行きやがったんだあの女ぁぁぁ…!」

俺、昨日言ったよな?

昨日の夜言ったよな?

「最近きな臭いことが多いから、一人で行動するなよ」って。

ちゃんと釘刺したよな?

そしたらあいつ、

「うん分かった」って答えたよな?

それから、約九時間後。

まさか半日も持たずに、脱走してるとは。

言ってやりたい小言は、この時点で100は浮かんだが。

まずは、探して、見つけて、ひっ捕まえるのが先決だ。

最悪、エリュティアに協力してもらって探索魔法を…と。

思いながら、奴の部屋に立ち入る。

女の部屋に勝手に、と思われるかもしれないが、今はそんなことどうでも良い。

脱走するあいつが悪い。

扉に、鍵は掛かっていなかった。

あれだけ、あれっだけ、寝るときはちゃんと部屋に鍵をしろよ、と言ったのに。

それすら守ってない。

いや、待て。

もしかして、誰かに連れ去られたのか?誰かが扉の鍵を開けて、中に入り。

あいつを連れて…。

しかし、それにしては窓が開いている理由が分からない。

扉から侵入出来たなら、扉から出れば良いのでは?

それとも逆で、窓から侵入し、扉から出た?

それにしてはおかしい。普通窓から侵入するなら、窓ガラスは割られているはず。

まさか、窓にも鍵を掛けていなかった、とか?

あぁ、もう考えることが多過ぎる。

とにかくあいつの居場所を探さなくては。

俺は、勢いよく窓のカーテンを開けた。

すると。

…探すまでもなく、奴はそこにいた。

隊舎を囲むように植えられた木によじ登って、枝の先に手を伸ばしていた。

…。

…あいつ、何やってんの?