神殺しのクロノスタシス3

…さて。

一時間ほど、たらいを囲んで大騒ぎするちびっ子達を眺めた後。

「そろそろ終わりですね」

残る線香花火は、この場にいる人数と同じ数だけ。

「えー。もう終わりかー」

「早かったね」

はしゃぎまくってたからな、お前ら。

ロケット花火とかネズミ花火とか、色んな種類があったが。

やはり、花火の最後と言えば線香花火。

そして。

「誰が最後まで落とさずに守り切るか…勝負ですよねぇ?」

ナジュが、にやりとして言った。

…定番の奴来た。

「守る…?」

ルールを理解していないらしい二人組。

初めてだもんな。

「ほら、これしばらくしたら落っこちるでしょう?それを落とさず、最後まで守り切ったものが勝ち。家庭用花火の醍醐味です」

「ふーん…。変な風習だね」

「誰が最後でも良くない?」

風情も糞もない。

そりゃそうなんだけど、でもそういうことじゃないんだよ。

すると。

「甘い、甘いですね二人共」

ナジュが、さも嘆かわしいと言わんばかりに、大袈裟に言った。

「…何が?」

「あなた達は分かってない。良いですか、この最後の線香花火、これが尽きるとき、あなた達の夏は終わるんです」

「…!?」

…なんか言い出したぞ。

「線香花火とは、夏の代名詞。そしてその花火が燃え尽きると同時に、我々の夏は終わる。それすなわち、線香花火とは、言わば一つの人生…命そのものなんです」

「人生…」

「命」

ナジュの口八丁に、踊らされていると気づかない二人。

線香花火で人生を語るな。

止めた方が良いのかもしれないが、なんか二人共乗り気になってるみたいだから、黙っとこ。

「この美しい命の灯火を、一秒でも長く…誇り高く咲き続けさせることが出来た勝者には、この上ない夏の栄冠が与えられるんです」

「灯火…」
 
「栄冠…」

…うん。

世間知らずの令月とすぐりは、上手いことナジュに乗せられてるけど。

これ、全部ナジュが適当言ってるだけだから。

皆、本気にするなよ?

イレースなんか見てみろ。

アホくさ、みたいな顔をしている。

天音は苦笑い。

シルナは…まんざらでもなさそう。

お前も子供だな。

「どうです?やる気になったでしょう?」

「うん…!」

「夏の栄冠…。俺、絶対取る」

やる気満々。

さすが、口先で人を騙すことにおいて、ナジュの右に出る者はいないな。

「失礼ですね羽久さん。僕は、可愛い教え子に、楽しい夏の思い出を作ってあげようとしてるだけじゃないですか」

「あーはいはいそうだな、とにかくやるぞ」

隙あらば人の心を読みやがって、全く。

良いから、さっさと始めるぞ。

夏の風物詩、いよいよ最後だ。