神殺しのクロノスタシス3

…ちなみに、ちょっとした余談(?)だが。

既に何度か説明したように、魔力の豊富な魔導師は、食事の必要がない。

空腹感を感じない。

便利だなー、と思う人も多いと思うが。

逆に言えば。

満腹感を感じることも、ない訳じゃないが、普通の…一般人に比べれば。

満腹感に関しては鈍い、と言われている。

故に。

「さて、第2注文タイムと行きますか」

「…」

…鬼だ。

鬼神イレース。

黒塗りページ、大人買いならぬ大人注文して。

注文した肉、全部平らげたにも関わらず。

更に注文しようとしている。

「い、イレースちゃん。も、もう勘弁…」

震え声のシルナを無視して。

イレースは、ポチッと呼び出しボタンを押す。

無情。

「は〜い、ご注文承りま〜す」

「はやっ」

さっきの、無邪気を絵に描いたような店員さんが降臨。

「さっき注文したのと同じメニュー、もう一回お願いします」

今日のイレースは、マジで容赦がなかった。

「ついでにこの伊勢海老と、黒アワビも追加で」

「畏まりました〜!」

シルナへの殺意が凄い。

あまりの殺意に天音が、もう絶句している。

「イレース…。お前、今日シルナを殺す気なのか…?」

こそっと尋ねてみると。

「いいえ?ただ私、毎月毎月、下らない菓子の請求書に苛立たせられてますから、たまには意趣返ししないと。私の精神衛生の為に」

物凄く納得な答えが返ってきた。

そうか。

ストレス発散は…大事だな。

仕方ないシルナ。日頃の行いって奴だ。

こんな形で返ってくるとはな。

やっぱり、人生、日頃から善行積んでとかないとな。

「僕もそう思います、羽久さん」

「一番悪行積んでる奴が、何を言ってんだ?」

今のは聞かなかったことにしておこう。

「お子様二人、他に欲しいものは?」

「んー、僕、この極上シャトーブリアン、ってのが美味しかったな」

「俺はね〜、極上ミスジってのがもう一回食べたい」

こいつらは、無邪気に残酷だな。

子供ってのはそういうもんだ。

「じゃ、シャトーブリアンとミスジを追加。あと、私のお酒も追加で」

「僕のもお願いしますね〜、あ、それとこちらの方のお酒も」

俺の分まで追加注文。

「天音さんは?」

「えっ、えっ…。ぼ、僕はもう、お腹いっぱいだから…」

何とか、自分だけでもシルナを守ろうとする優しい天音。

しかし、イレースは無情だった。

「そうですか。じゃあ彼には極上ハラミを追加で」

本人の意志、完璧に無視。

「はーい、畏まりました!それで、そちらのお客様は?」

悶絶しているシルナを指差す、無邪気店員。

「…」

シルナは、もう机に突っ伏して、ぴくりとも動いてない。

死んでんじゃないの?

そんなシルナの代わりに、イレースが注文した。

「彼には、チョコアイスを追加で」

「畏まりました!」

…だってさ、シルナ。

チョコアイスだって。

今日初めて、イレースが見せてくれた僅かな優しさだと思おうぜ。

お前の犠牲によって味わった肉の味、俺は忘れないよ。