神殺しのクロノスタシス3

「…何で離したの?」

「脅威ではないからだ」

…何?

「貴様の素性は割れている。回復魔法専門。イーニシュフェルト魔導学院の魔導師の中で、最弱の男」

「…」

「戦いを厭い、後方で仲間の治療にのみ徹する。多少の光魔法は使えるようだが、それとて大した脅威ではない」

…そう。

「殺すのは簡単だが、貴様は回復魔法の得手により、自己治癒力が他の者より高いと聞く。ならば、問題ない。完膚なきまでに切り捨てるのみ」

だったら、最初に…僕の喉元を掻き切るべきだったね。

そうすれば、万に一つでも勝ち目は生まれただろうに。

そして、それが『アメノミコト』のやり方のはず。

これも何かの罠かと疑ったが、恐らく違う。

ヴァルシーナに連れられてここに来たときから、この人達は既に、ヴァルシーナの洗脳魔法下にあるのだろう。

つまり、僕を脅威とみなしていないのは、この人の意志ではなく、ヴァルシーナだ。

仕方ないね。ヴァルシーナと僕には、大した接点はないのだから。

「…良かった」

「…?何がだ」

「二つある。一つ目は、ここに僕の仲間が誰もいないこと」

こんな姿は、見られたくないから。

いや、ナジュさんだけは、読心魔法で薄々勘付いてはいたのだろうけど。

そして、僕をイーニシュフェルト魔導学院に連れてきた、シルナ・エインリー学院長。

彼ももしかしたら、長年の勘で、気づいているかもしれない。

気づいていたから、僕をここに…学院に連れてきたのかもしれない。

あくまで、養護教員として。

でも、実際に見せるのと、想像するのでは、全然違うだろう?

そして。

「二つ目は…君が、君達が、『俺』を舐めていてくれたこと」

だから。

俺は杖を手放し、代わりに。

光魔法で作った…双剣を両手に構えた。

「ごめんね。久し振りだから…ちょっと、手加減出来ないかもしれない」

「…!」

俺の素性は割れている、と言ったな?

ヴァルシーナ。

それが本当に真実の情報なのか、確かめさせてもらうよ。