神殺しのクロノスタシス3

ようやく目が慣れて、視界が戻ってきたときには。

床に、僕の血と、ご老人に切り落とされた肘から下。

そして、僕自身が切り落とした肩から肘にかけての右腕が、段々とどす黒く染まっていった。

あれが毒か。あー怖い怖い。

僕が瞬時に右肩から切り落としてなかったら、今頃全身に毒が回ってるところだった。

腕一本で済むなら、安いもんだ。

「…見事な判断だ」

僕が言葉を告げる前に、ご老人はそう言った。

「これでも、死に慣れてるんでね」

お褒めに預かり光栄。

それから。

「あなたの切り札、これでもうなくなったみたいですけど」

読心魔法を再開したとき、ご老人にはもう、何の手も用意されてないことが分かった。

本当に捨て駒だったんですね。気の毒な。

「どうするんですか?老人ホーム入りたいなら、紹介しますけど」

「結構だ。例え切り札がなかろうと、負けることが分かっていても、最期の瞬間まで…己の任務を全うするまでのこと」

聞こえは良いけど、玉砕するって訳ですか。

良いね。凄く羨ましい。

玉砕出来るなんて、最高の贅沢じゃないか。

「良いですよ。僕は老人に優しいタイプなんで、あなたの死に舞台に付き合ってあげます」

でも、あなたが死ぬ前に。

これだけは、言わせておいてもらうぞ。

「…僕は死に急いでるんじゃない。死に焦がれてるんです」







だから、最高に格好良く向こう側に逝けるあなたが、羨ましくて仕方ないよ。