神殺しのクロノスタシス3

「矜持は立派ですが、しかし僕は、あなたに足止めされる訳にはいかな…」

と、僕がまだ喋っている間に。

ご老人の、素早い斬撃が飛んできた。

僕はそれを避け、杖を振った。

風魔法の刃がご老人を襲ったが、ご老人はそれすら切り捨てた。

さすが、老いたとはいえ、『終日組』を名乗るだけのことはある。

とはいえ、こちらに読心魔法が使える以上、どれだけ向こうが刀を振ったところで…。

「無駄死にですよ、あなた」

「無駄死にでも構わん。この魂は、既に『アメノミコト』に捧げている!」

「…良いですね、無駄死に出来るって」

僕は羨ましい。

例えそこに意味がなくても、人生の結末に死が待っているのなら、僕はそれだけで羨ましい。

そのときだった。

読心魔法で、ご老人が何を企んでいるのか分かった。

一応、読心魔法対策…もどきみたいなものは、してきてたんだ。

「あ、やば」

「もう遅い」

ご老人は、懐から拳大の球体を投げた。

閃光弾だ。

急激に、目を開けていられないほどの眩しい光が飛び込んできた。

そしてその一瞬、気を逸らされた僕は、読心魔法を途切れさせてしまった。

おまけに、閃光弾をまともに食らったせいで、目を開けても真っ白で何も見えない。

成程、そんな対策法もあるのか。

一瞬でも僕を動揺させれば、読心魔法は途切れる。

良い手段だね。簡単で。

僕の読心魔法を、一瞬でも途切れさせる為。

その為に、暗殺者らしくもない、派手な閃光弾なんて獲物を使ってきたのだ。

そして。

その一瞬の隙が、僕の右腕の肘から下を両断した。

切られた。

長年、不死身の身体をやっている身だ。

身体を切られれば、すぐに分かる。

あ、今腕なくなったな、って。

切断面から、噴水のように血が噴き出すのも分かった。

そして『アメノミコト』所属であるあのご老人の刀には、間違いなく毒が塗ってある。

ご老人の目的は、僕をここに留め、ヴァルシーナ達のもとに向かわせないこと。

また前みたいに、呼吸を止める毒か、あるいは身体を麻痺させる毒か。

いずれにしても、僕をこの場から動かさない為、移動させない為の毒を使っているはず。

だから、ご老人はその毒を塗った刀を、少しでも僕に掠らせさえすれば。

それだけで、任務完了なのだ。

だが、そうは行かない。

僕は、残された左手で杖を振り。

発生させた風魔法の刃で、切られた右腕を、肩の辺りから一刀両断した。

毒が身体に回る前に、右腕を丸ごと切断した。

これで、毒は回らない。

ご老人が閃光弾を使ってから、僕が肩から右腕を切り落とすまで。

この一連の全てが、一瞬の攻防だった。