…えー。
なんか、凄いショックなんですけど。
「何だ、徘徊中の老人ですか…。お爺さん、さっきお昼は食べたでしょう?早くお家に帰ってください」
僕は、暗殺者の相手をしに来たのだ。
冴えないご老人の話し相手なんて、御免だ。
しかし。
ご老人の方は、僕に用事があるようで。
「…お前か。読心魔法を使う、死に急ぎの魔導師というのは」
見た目通りのしわがれた声で、僕にそう話しかけた。
「…それが何か?」
「儂の役目は、お前をここで足止めすること。お前を行かせる訳にはいかん」
…あ、そう。
「でも僕は、あなたに用事はないんです。さっさとヴァルシーナ達のところに…」
老人の相手をしてる暇はないので、羽久さん達の加勢に向かおう。
その前に、天音さんを救出するのが先だな、と。
思った、そのとき。
ご老人が、刀を抜いた。
まるで老人とは思えない、素早い動きだった。
でも、令月さんよりは遅い。
何より、心を読むまでもなく殺気出し過ぎだから。
僕は飛び退いてそれを避け、教室の机の上に着地した。
僕が立っていた後ろの扉が、バターみたいにスッパリと切られていた。
切れ味は保証します、ってところか。
「…ふーん」
僕は、ご老人の心の中を読んだ。
「可哀想ですね、あなた」
「…可哀想、か。何故(なにゆえ)そう思う?」
「全盛期は『終日組』で重宝されていたのに、老いて身体が動かなくなってきた途端、捨て駒扱いとは」
「…」
このご老人。
若い頃は、優秀な暗殺者として、『終日組』で幅を利かせ。
頭領からも重宝されていたのに。
全盛期を過ぎ、老人になった今。
捨て駒として、ここにいる。
「…儂ら暗殺者は、所詮道具」
それが、ご老人の答えだった。
「『アメノミコト』はそういう組織だ。要らない物、使えなくなった古い道具は捨てられ、新しい物に変えられる。それが『アメノミコト』の理。儂はずっと、その世界で生きてきた」
「だから、自分がこれまで見捨ててきた暗殺者仲間と同じように…今度は自分が見捨てられても、後悔はないと?」
「そうだ」
「へぇ…」
さすが、無駄に年齢を重ねてきた訳ではなさそうだ。
「例え腕をもがれ、足を折られようとも、最期まで己の任務を全うする。それが…」
「あなたの、『終日組』としての矜持ですか。大層立派で、羨ましいですね」
家畜の豚は、家畜の豚として相応しい最期を遂げる。
そしてこのご老人は、自分が家畜の豚だということを知っている。
家畜でも、豚でも何でも羨ましい。
…その一生に、終わりがあるのなら。
なんか、凄いショックなんですけど。
「何だ、徘徊中の老人ですか…。お爺さん、さっきお昼は食べたでしょう?早くお家に帰ってください」
僕は、暗殺者の相手をしに来たのだ。
冴えないご老人の話し相手なんて、御免だ。
しかし。
ご老人の方は、僕に用事があるようで。
「…お前か。読心魔法を使う、死に急ぎの魔導師というのは」
見た目通りのしわがれた声で、僕にそう話しかけた。
「…それが何か?」
「儂の役目は、お前をここで足止めすること。お前を行かせる訳にはいかん」
…あ、そう。
「でも僕は、あなたに用事はないんです。さっさとヴァルシーナ達のところに…」
老人の相手をしてる暇はないので、羽久さん達の加勢に向かおう。
その前に、天音さんを救出するのが先だな、と。
思った、そのとき。
ご老人が、刀を抜いた。
まるで老人とは思えない、素早い動きだった。
でも、令月さんよりは遅い。
何より、心を読むまでもなく殺気出し過ぎだから。
僕は飛び退いてそれを避け、教室の机の上に着地した。
僕が立っていた後ろの扉が、バターみたいにスッパリと切られていた。
切れ味は保証します、ってところか。
「…ふーん」
僕は、ご老人の心の中を読んだ。
「可哀想ですね、あなた」
「…可哀想、か。何故(なにゆえ)そう思う?」
「全盛期は『終日組』で重宝されていたのに、老いて身体が動かなくなってきた途端、捨て駒扱いとは」
「…」
このご老人。
若い頃は、優秀な暗殺者として、『終日組』で幅を利かせ。
頭領からも重宝されていたのに。
全盛期を過ぎ、老人になった今。
捨て駒として、ここにいる。
「…儂ら暗殺者は、所詮道具」
それが、ご老人の答えだった。
「『アメノミコト』はそういう組織だ。要らない物、使えなくなった古い道具は捨てられ、新しい物に変えられる。それが『アメノミコト』の理。儂はずっと、その世界で生きてきた」
「だから、自分がこれまで見捨ててきた暗殺者仲間と同じように…今度は自分が見捨てられても、後悔はないと?」
「そうだ」
「へぇ…」
さすが、無駄に年齢を重ねてきた訳ではなさそうだ。
「例え腕をもがれ、足を折られようとも、最期まで己の任務を全うする。それが…」
「あなたの、『終日組』としての矜持ですか。大層立派で、羨ましいですね」
家畜の豚は、家畜の豚として相応しい最期を遂げる。
そしてこのご老人は、自分が家畜の豚だということを知っている。
家畜でも、豚でも何でも羨ましい。
…その一生に、終わりがあるのなら。


