神殺しのクロノスタシス3

「良いですか。この機会に教えてあげましょう」

私が、さっきから何に苛立っているのか。

「お宅らマフィアとは違って、我がイーニシュフェルト魔導学院は、慢性的な資金不足なんです。何処ぞの馬鹿な学院長が、学費免除枠、及び学費減額枠での入学生を見境なく増やし、あまつさえ緩い条件で奨学金を貸し…」

挙げ句、その奨学金だって。

「え、そんなの貸したっけ?もう良いよ良いよ、返さなくて。それよりおやつ食べてかない?」と、とぼけたことばっかり言って、ほとんど徴収しない。

お陰で、学院の経済状況はいつも、自転車操業。

政府や聖魔騎士団、魔導教育委員会からの助成金。

あとは、裕福な卒業生の寄付金で、何とかやりくり出来ている始末。

それなのに、あの学院長と来たら。

今年の春から、『ヘンゼルとグレーテル』なんて店にハマって、二度もお取り寄せスイーツを大量に購入、無駄な出費をし。

そのツケを、どうやって払わせようかと悩んでいるところに。

この、クナイ女がやって来た。

そして今、こうして。

備品まみれの食堂で、やりたい放題。

「あなたが壊したその椅子、テーブル、窓ガラス、テーブルクロス…。皿も割れましたね。食器棚も壊れてます。それら全部、新調しなければならないんですよ?」

「…」

「何ですか、そのとぼけた顔は。良いですね資金が潤沢な組織は。こっちは毎日、チョコレートを摘んで呑気顔晒してる学院長を、思わず殴りたくなる衝動を必死に堪えながら、乏しい予算の中で何とかやりくりしようと、苦心してるんです」

そこに、こんな余計な出費。

しかも、夏休みが終わり、生徒達が帰ってくるまでに、急いで用意しなければならない。

「おまけにあなた達の使う、その得体の知れない毒」

可能な限り、撃ち落としてはいるが。

撃ちこぼしてしまったクナイが、食堂内のあちこちに散らばっている。

「あれだって、いちいち消毒しなければいけないんですよ。どうしてくれるんですか?どう責任を取ってくれるんですか?あなたが死んだって、学院の予算が増える訳じゃないんですよ!」

「え、えっと…それは…」

「これ以上備品を壊したくないから、こちらは一生懸命魔法の出力を絞って、少しでも周囲への被害を最小限にしようとしてるのに、あなたと来たら!壊したい放題、やってくれるじゃないですか。え?」

…あぁ。

言ってたら、余計イライラしてきた。

これはもう、何らかの形で発散しないと。

今目の前に、学院長のアホ面があったら、絶対殴り飛ばしてる自信がある。

「しかも、それを二流呼ばわり。良いですよ。もう学院の予算なんて知ったことじゃありません。全部、学院長のポケットマネーで出してもらいますから。構いません」

ついでに、学院長の冬のボーナス全カットで、まぁ収拾はつくだろう。

…そんな訳で。

「…遠慮なく、やらせてもらいますよ」

私を苛立たせたこと。

私を、食堂なんかに呼び出したこと。

私のいる、このイーニシュフェルト魔導学院に攻め込んできたこと。

何もかも、全部後悔させてあげましよう。