神殺しのクロノスタシス3

「あなたが、『アメノミコト』の刺客ですか」

恐らく、ヴァルシーナとレーヴァテインは、学院長達を呼び出した中庭に行ったのだろうから。

私が食堂に呼び出されたのは、何らかの罠に嵌める為か。

あるいは、『アメノミコト』の刺客と戦わされるか。

そのどちらかだろうと思っていたんですが。

どうやら、後者のようですね。

「学院は今、夏休みの最中なので。さっさとお引取り願えませんかね」

厄介事は御免だ。

大体、私はこの夏休み、やるべき仕事がたくさんあり。

特に、学院運営の来年度予算案から、学院長の菓子代引き下げを目論んでいたのに。

こんなに立て続けに色々起こったんじゃ、それどころじゃない。

面倒だから、減額じゃなくて、いっそ削除しようか。

「…そういう訳にはいかないの」

ゆらり、と。

黒装束の女が立ち上がった。

「私の仕事は、お前を殺すこと。お前を殺して、頭領様に報告する。それが私の仕事」

あぁ、それはそれは。

ご大層な任務ですこと。

「でもあなた、失礼ですけど」

私は、黒装束の女を指差した。

「今ここにいる時点で、その頭領様とやらからは捨て駒扱いされてるんじゃないんですか?」

ヴァルシーナなんかに与える戦力が、鬼頭夜陰の本命であるはずがない。

きっとすぐりさんと同じく、鬼頭に「役立たず」認定された暗殺者なのだろう。

一度、役立たずの烙印を押された時点で。

今更どんな功績を立てようが、その烙印を消すことは出来ない。

鬼頭に認められることはない。

捨て駒は、所詮捨て駒でしかない。

それが『アメノミコト』の流儀のようだから。

しかし。

「頭領様が私のことを、どう思っていようが関係ない」

…そうですか。

「私は、私の任務を遂行するまで」

「…どうやら、分かり合えなさそうですね」

宜しい。

あなたは、あなたの任務を果たす。

しかし私は、その任務を果たされてしまうと困る。

まだ、死ぬ訳にはいきませんからね。

だから。

「良いですよ、分かりました」

交渉は、決裂した。

そちらが、その気なら。

私も、その気で戦うとしよう。

私は、杖を握り締めた。

その杖の先からは、既に雷が迸っていた。

…学院内で戦うのは、非常に不本意なのですが。

ここから出たら、人質にされた天音さんがどうなるか分からない。

故に。
 
「可及的速やかに…かつ美しく、死んで頂きましょうか」