神殺しのクロノスタシス3

「天音!!」

気がついたときには。

天音が、両手を背中で抑えられ、喉元に細いナイフを当てられていた。

ヴァルシーナやレーヴァテインじゃない。

黒子のように顔を隠し、黒装束に見を包んだ…『アメノミコト』の、暗殺者だ。

そしてこの素早い動き、恐らく…『終日組』の暗殺者だ。

俺達は即座に杖を握ったが、しかし。

「動くな」

『終日組』の暗殺者が、細いナイフを天音の首筋に這わせた。

切れ味の鋭いナイフが、天音の喉元の皮膚を薄く破り、そこから血が滲んだ。

こ、の…。

「シルナ・エインリーと羽久・グラスフィアの両名は中庭に行け」

「何だと…?」

唐突に人様の窓ガラス壊して、天音を人質に取って。

何を言い出すんだ。

「問い返すことは許さん。次口を開いたら、こいつの命はないぞ」

「…」

…成程。

まさに奇襲作戦だな。

まず、真っ先にこの場にいる誰かを人質に取り。

人質の命を保証する為、俺達に言うことを聞かせる。

暗殺者の常套手段。

一塊になっている俺達を分断させ、各個撃破するつもりか。

まぁ、俺達に固まられていたら、面倒だろうからな。

しかも、俺とシルナをご指名とは。

いかにも、ヴァルシーナ考えそうな作戦じゃないか。

「ルーチェス・ナジュ・アンブローシアは、第二講義室。イレース・クローリアは食堂。黒月令月と花曇すぐりは第一稽古場」

…どうやら、学院内の構造を理解しているらしいな。

確実に俺達を分断出来るよう、良い感じに距離を離した場所を指定してきやがる。

おまけに、裏切り者二人は、まとめて始末する気満々か。

「5秒以内に動け。さもなくば…」

天音を殺す、か。良いだろう。

俺達はアイコンタクトを交わし、それぞれ指定された場所に動いた。

従わなければ天音の命が危ないのなら、従わざるを得ない。

去り際、俺は人質にされている天音の目を見た。

怯えてはいなかった。

むしろ、「自分は大丈夫だから、行って」と、アイコンタクトで伝えてきた。

…分かった。信じる。

だから、絶対生きて、また会おう。

そして、シルナの奢りで、焼肉食べに行くんだ。