神殺しのクロノスタシス3

それどころか。

「はい、9のスリーカードです」

「すご。俺ツーペアだよ」

「僕もツーペアだ」
 
「えーと、僕は2のワンペア…」

「イレースちゃん強くない?ってか皆強くない!?私ブタだよ!」

「学院長、さっきから通算9連敗ですね。しかも全部ブタ」

「豚のように菓子ばかり貪ってますからね。お似合いでしょう」

「イレースちゃん辛辣!」

…何故か。

皆で仲良く、ポーカーを楽しんでいる。

「他にブタ仲間はいないの!?羽久!羽久の手札は!?」

「…俺もスリーカードだよ。4だけど」

イレースと同じくスリーカードだが、イレースの方が数字が大きいから、イレースの勝ちだな。

つーか、9回やって9回ブタって、それはそれで、逆の意味で強運に恵まれているのでは?

「えぇぇぇ!また私ビリ!?またビリなの!?」

「あははー。学院長せんせーよわ〜い」

「君達が強過ぎるんだよ!おかしいでしょ!つい一時間前にルール教えたばっかりだよ!?」

そう。

ジャマ王国出身の令月とすぐりは、ポーカーのルールを知らなかった。

それどころか、トランプを見せても、物珍しそうに眺めている始末。

ルールを一通り説明し、とりあえずやってみようとプレイし始めて、早一時間。

元暗殺者二人組、ついさっきまでルールを知らなかったとは思えないほどの、勝率を叩き出している。

凄い。

何せこの二人、手札が配られても、表情の一つも変えないの。

ブタだろうとフルハウスだろうと、全く表情が変わらない。

さすが、ポーカーフェイスは暗殺者の基本ということなのか。

手札が配られる度、露骨に満面の笑みになったり、露骨にどよーんとしたり、分かりやす過ぎるシルナとは、対照的だ。

ちょっとは見習え。

それなのに。

「おかしくない!?何でさっきから、私ばっかり負けるの?ディーラーが意図して、私を負けさせるディーリングをしているとしか思えない!」

ビシッ!とナジュを指差すシルナ。

自分のポーカーフェイスの欠如を、ディーラーのせいにしている。

ちなみに、ナジュがプレイヤーではなく、ディーラーをやっているのは。

こいつがプレイヤーだったら、確実に読心魔法と言う名の不正行為が行われ、ナジュの一人勝ちになるに決まっているからである。

故に、ナジュがディーラーを務めている。

のだが。

「人聞きが悪いですね…。僕は何も小細工はしてませんよ。あくまで公平に配ってます。自分の運のなさを、僕のせいにしないでください」

「ぐぬぬ…」

「ついでに言っときますが、分かってますね?10回負けた者は、全員に焼肉を奢る」

そして、こんな賞品まで賭けられている。

「ふっ。皆さん、学院長の肉はすぐそこですよ。いやぁディーラーやってるだけで、焼肉を奢ってもらえるとはな〜」

「精々、霜降り肉をたらふく食べさせてもらうとしましょうか」

「学院長先生…。ご馳走様です」

「うわぁぁぁん!この子達、もう食べさせてもらう気満々だぁぁぁ!」

「学院長の肉だって。美味しいのかな、『八千歳』」

「古い肉だから、そんなに美味しくないんじゃない?」

「うわぁぁぁぁん!この子達、物凄く残酷な勘違いしてるぅぅぅぅ!」

しれっと、古い肉呼ばわりされてるしな。

古いどころか、腐りかけてると思うぞ。

年齢的にな。

「じゃ、次。カード配りまーす」

「お願い、良いカード来て良いカード。戦局を覆すような…ロイヤルストレートフラッシュ来て」

9回連続でブタだった奴が、10回目でロイヤルストレートフラッシュ狙いって。

どんな奇跡だよ。

…ところで。

「…なぁ、誰も聞かないから、一応俺が聞いとくけどさ」

「んー?」

それぞれ、配られた手札を確認しながら。

シルナは絶望した顔してるので、多分またブタだな。

それはともかく。

「…俺達、こんなポーカーなんかやってる余裕、あんの?」

今すぐ、この瞬間にも。

すぐ側まで、『アメノミコト』が学院を包囲しているかもしれない。

そんな状況で、何故俺達は、呑気に賭けポーカーをやっているのだろう。