神殺しのクロノスタシス3

だが。

私は、この女…レーヴァテインを、味方だとは思っているが。

志を同じくする仲間、とは思っていない。

これは、あくまで私が洗脳魔法で作り出した、偽物に過ぎない。
 
ただの、私の操り人形だ。

私の意見、私の考えに、全面的に賛同し。

決して私を裏切らず、私と同じく、イーニシュフェルトの里の理念を植え付け。

シルナ・エインリーを殺す為だけに作り出された、ただの人形。

それだけに、裏切られる心配はない。

そして、便利な駒でもある。

『アメノミコト』の鬼頭夜陰のように、気まぐれで私に協力したり、気まぐれで突き放したりはしない。

だが、薄汚い存在であることに変わりはない。

レーヴァテイン自身は、私が自分に絶対的な信頼を寄せている、と思い込んでいる。

そう思い込ませたのは、他ならぬ私だからだ。

それでもこの女は、所詮二十音・グラスフィアの枝分かれでしかない。

根本は、あの憎い邪神の依代と変わらないのだ。

おまけにこの女は、絶好の機会を作ってやったにも関わらず。

シルナ・エインリーの暗殺に失敗し、のこのこと戻ってきた。

本来なら、あれで仕留められるはずだったのに。

『アメノミコト』の元暗殺者共に、容易く阻まれてしまった。

今頃小賢しい奴らは、私が洗脳魔法を使って、レーヴァテインを生み出したことも。

そして、私の洗脳魔法が、まだそれほど万能ではないことも、気づいているはずだ。
 
それで互いに疑心暗鬼に陥り、勝手に自滅してくれれば良いが。

奴らは、そこまで馬鹿ではないだろう。

レーヴァテインが暗殺に失敗したのは、仕方ないとして。

それならば今度は、『アメノミコト』と共同戦線を張り、傲慢にもイーニシュフェルトの名を持つ魔導学院に攻め込み。

『アメノミコト』の裏切り者も含め、シルナ・エインリーと、それを取り巻く面倒な魔導師達も。

この機に、一網打尽にしてやるつもりだった。

当初は、その計画だった。

それなのに。

私の手元に残されたのは、人形のレーヴァテインと。

『アメノミコト』、『終日組』の暗殺者五人だけ。

頼りの『終日組』の暗殺者とて、大した戦力にはなるまい。

あの鬼頭夜陰が、私に託してきたということは。

『終日組』の中でも、花曇すぐりと同じく、捨て駒扱いされている暗殺者達。

本当に重宝している手駒なら、鬼頭が自分のもとから手放すはずがないからだ。

あの忌々しいシルナ・エインリーと、その手駒達のこと。

今頃、私達が攻めてくると踏んで、万全に迎撃の準備を進めていることだろう。

イーニシュフェルト魔導学院の教師達だけではない。

実質シルナ・エインリーは、聖魔騎士団をも支配下に置いている。

奴が一声かければ、聖魔騎士団は喜んで動くはずだ。

それに奴は、ルーデュニア聖王国の女王フユリ・スイレンとも交友がある。

あの男は、ルーデュニア聖王国そのものを、実質支配していると言っても過言ではない。

自分と、自分の大事な邪神の依代を守る為に、奴はそこまでのことを成し遂げたのだ。

長い時間をかけて地盤を固め、手駒を増やし。

イーニシュフェルトの賢者である誇りも、使命も、死者の無念さえもかなぐり捨て。

卑しくも、イーニシュフェルトの名をつけた学院の頂点に立ち、あぐらをかき続けている。

…断じて、許されることではない。