神殺しのクロノスタシス3

「…」

一同が、しばししんと静まり返った。

…最初に口を開いたのは、イレースちゃんだった。

「…成程。読心魔法も大概ですが、洗脳魔法ですか…。面倒ですね」

「えー。ちょっとちょっと。僕の純真無垢な読心魔法と、ヴァルシーナの卑劣な洗脳魔法を、同列に語らないでもらえます?」

「ちょっと聞こえませんでしたね。何が純真無垢ですって?」

…辛辣。

とはいえ。

最初にナジュ君の読心魔法を聞いたときも、驚いたものだが。

洗脳魔法も、同じだけのインパクトがあるのは共通してるね。

でも、多分間違いないだろう。

「そういう研究…されてたんですか?イーニシュフェルトの里で…」

おずおずといった風に尋ねる天音君。

「してたよ」

洗脳魔法だけじゃない。

あの場所では、ありとあらゆる魔法の研究をしていた。

何せ、イーニシュフェルトの里は、世界の魔法の最先端を行っていたのだ。

その中に、洗脳魔法も含まれていた記憶がある。

「じゃあ、学院長にも使えるの?その洗脳魔法」

「いや、私自身は試したことがないね…」

そういう、今なら要注意魔法区分に分類されるような、悪用の可能性が高い魔法については。

主に、年嵩の賢者達が研究していた。

私は、精々「そういう研究をしている」と耳にした程度。

使い方なんて知らないし、使ってみたこともない。

ただ…。

ヴァルシーナちゃんは、族長の孫娘だった。

何らかの経緯で、危険な魔法の研究資料について、触れていてもおかしくはない。

そもそも、あの里にいたという時点で。

どんな魔法を知っていたとしても、おかしくはない。

「…ねぇ、もしほんとに洗脳魔法ってのをヴァルシーナが使ってるんなら、ここにいる、ナジュせんせー以外の全員が危なくない?」

と、すぐり君。

「え、ど、どういう…」

「鈍いね天音せんせー。俺達皆、ヴァルシーナに会ってるんだよ?あのとき、知らないうちに洗脳魔法使われてたら、どーするのさ?」

「…!」

…その危険は、確かにあるね。

「羽久せんせーのこれまでの様子を見るに、どうやら、洗脳魔法を使われても本人に自覚はないみたいだし」

「そりゃそうだろ。洗脳されてる奴は、誰も『自分が洗脳されてる』とは思わない」

「だとしたら、私達のうち誰かの目を通して、今こうして話してることも筒抜けかもしれませんね」

それは恐ろしい。

しかし、その可能性はある。

「あなたの読心魔法で分からないんですか?誰が洗脳状態にあるか」

ナジュ君に尋ねるイレースちゃん。

読心魔法で見分けがつけば良いのだが、ヴァルシーナちゃんはこちらにナジュ君がいるのを知ってる訳で。

だから、恐らく…。

「無理ですね。僕はあくまで、本人が考えてることしか分かりません。皆して『自分は洗脳なんかされてない』と思い込んでるんだから、本当に洗脳されてるのか否かなんて、僕にも見抜けません」

…だよね。

ナジュ君の読心魔法で打ち破れるなら、ヴァルシーナちゃんだって、そんな半端な洗脳魔法なんて使わない。

洗脳する意味がない。

「全く。肝心なときに使えませんね、あなたの読心魔法は…」

「こらこら、イレースちゃん…」

ナジュ君が悪いんじゃなくて、ヴァルシーナちゃんがそれ相応の対策をしてきた。それだけの話だよ。