「そ、そんな…。里の賢者達がそんなことをしてたのは、学院長先生の意思じゃないでしょ?」
「どうせ、頭の堅い長老連中が、自分達の権威と威信の為に、研究を独占していたんでしょう。年寄りのやることです」
天音君とイレースちゃんが、私を庇うようにそう言ってくれた。
…ありがとうね。
「…若い魔導師の中には、もっと里の魔導化学を世界に広めようという意見を持つ人もいた。けど…イレースちゃんの推測通り。長老達が許さなかった」
「やはり、そうでしたか」
私も、イーニシュフェルトの里だけで知識を独占するのには、反対していた。
もっと広く世界に伝え、魔導化学を共有すれば。
世界にいるもっと多くの魔導師達によって、更なる魔導化学の発展が見られたかもしれない。
その可能性は、大いにあったと思う。
魔導師は、イーニシュフェルトの里だけに存在していた訳じゃない。
世界中、至るところに魔導師はいたのだ。
中には、里の魔導師にも引けを取らない、優秀な魔導師もいたかもしれない。
ジュリス君が、良い例だ。
しかし、長老達は、そんな若者達の意見に耳を貸さなかった。
言い方は悪いが…イレースちゃんの言うように、頭が堅かったのだ。
世界で最も魔導化学に精通しているのは、イーニシュフェルトの里でなければならない。
自分達一族だけが、世界で最も進んだ魔導師であるという…プライドがあった。
他に先を越されるなんて、絶対許せなかった。
頭の悪い外の連中に、自分達の知識を教えれば、どんな風に悪用するか分かったものではない。
それが、長老達の意見だった。
しかし、一概に長老達の意見が間違っていたとは思わない。
私達が研究していた魔導化学の中には、扱いに困る、危険な研究もあった。
それこそ、安易に里の外に漏らせば、悪用されかねない危険な魔法。
ナジュ君の読心魔法だって、その一つだ。
ナジュ君があの時代にいたら、すぐさま長老達の手によって、里の中に隔離、幽閉されていただろう。
危険な魔法の使い手を、野放しにはしておけないから、と。
ナジュ君は、読心魔法を妄りに乱用している〜とか、よく怒られてるけど。
私にしてみれば、あのくらいは可愛いものだ。
ナジュ君は、正しく読心魔法を使っている。私はそう思う。
何せ、他人の心を読めるのだ。
ナジュ君が本当に悪人なら、いくらでも犯罪に使い放題だろう。
銀行口座番号や、金庫の鍵の在り処も筒抜け。
いくらでも悪用可能だ。
人が今から言おうとしてることを先読みし、からかうくらい、可愛いものじゃないか?
「…金に興味ないですからね、僕」
「…そうだね。そうやって、君は読心魔法を正しく使ってる。でも、世の中には悪いことを考える人がいるから」
危険な魔法や、扱いに注意を要する魔法を、外に漏らさない為。
だからこそ、そういう危険で高度な魔法については、イーニシュフェルトの里の中だけで独占していた。
それにあの頃の私は、里の中でも、大した発言権はなかった。
単なる若造の一人でしかなかった。
若造共に何を言われようが、長老達は考えを変えはしなかった。
お陰で、イーニシュフェルトの里の消滅によって。
里の中で進んでいた、魔導化学の研究も同時に、全て失われてしまった。
研究を覚えている人も、研究を記した書物も、消えてなくなった。
残っているのは。
私の頭の中にある記憶。
そして、ヴァルシーナちゃんの頭の中にある記憶のみ。
「…成程。進んだ魔導化学の知識の中で、ヴァルシーナが何を記憶し、何を使っているのか、特定出来ないってことですか」
「…そうなんだよ」
私の心を代弁してくれて、ありがとうナジュ君。
イーニシュフェルトの里の消滅と共に、ほぼ全ての魔導化学は失われた。
しかし、生存者の頭の中には、僅かながらでもその知識の片鱗は残っている。
私もそうだ。
その片鱗を頼りに、現在の魔導化学を発展させようとしている。
そしてその片鱗は、ヴァルシーナちゃんの中にもあるだろう。
ヴァルシーナちゃんは、私と同じことをしているはずだ。
失われた魔導化学の片鱗を、自分なりに研究し直し、自分に扱えるようカスタマイズしているはず。
故に。
彼女がどんな魔法を得意とし、どんな魔法を扱えるのか、正確に全て把握することは不可能なのだ。
「どうせ、頭の堅い長老連中が、自分達の権威と威信の為に、研究を独占していたんでしょう。年寄りのやることです」
天音君とイレースちゃんが、私を庇うようにそう言ってくれた。
…ありがとうね。
「…若い魔導師の中には、もっと里の魔導化学を世界に広めようという意見を持つ人もいた。けど…イレースちゃんの推測通り。長老達が許さなかった」
「やはり、そうでしたか」
私も、イーニシュフェルトの里だけで知識を独占するのには、反対していた。
もっと広く世界に伝え、魔導化学を共有すれば。
世界にいるもっと多くの魔導師達によって、更なる魔導化学の発展が見られたかもしれない。
その可能性は、大いにあったと思う。
魔導師は、イーニシュフェルトの里だけに存在していた訳じゃない。
世界中、至るところに魔導師はいたのだ。
中には、里の魔導師にも引けを取らない、優秀な魔導師もいたかもしれない。
ジュリス君が、良い例だ。
しかし、長老達は、そんな若者達の意見に耳を貸さなかった。
言い方は悪いが…イレースちゃんの言うように、頭が堅かったのだ。
世界で最も魔導化学に精通しているのは、イーニシュフェルトの里でなければならない。
自分達一族だけが、世界で最も進んだ魔導師であるという…プライドがあった。
他に先を越されるなんて、絶対許せなかった。
頭の悪い外の連中に、自分達の知識を教えれば、どんな風に悪用するか分かったものではない。
それが、長老達の意見だった。
しかし、一概に長老達の意見が間違っていたとは思わない。
私達が研究していた魔導化学の中には、扱いに困る、危険な研究もあった。
それこそ、安易に里の外に漏らせば、悪用されかねない危険な魔法。
ナジュ君の読心魔法だって、その一つだ。
ナジュ君があの時代にいたら、すぐさま長老達の手によって、里の中に隔離、幽閉されていただろう。
危険な魔法の使い手を、野放しにはしておけないから、と。
ナジュ君は、読心魔法を妄りに乱用している〜とか、よく怒られてるけど。
私にしてみれば、あのくらいは可愛いものだ。
ナジュ君は、正しく読心魔法を使っている。私はそう思う。
何せ、他人の心を読めるのだ。
ナジュ君が本当に悪人なら、いくらでも犯罪に使い放題だろう。
銀行口座番号や、金庫の鍵の在り処も筒抜け。
いくらでも悪用可能だ。
人が今から言おうとしてることを先読みし、からかうくらい、可愛いものじゃないか?
「…金に興味ないですからね、僕」
「…そうだね。そうやって、君は読心魔法を正しく使ってる。でも、世の中には悪いことを考える人がいるから」
危険な魔法や、扱いに注意を要する魔法を、外に漏らさない為。
だからこそ、そういう危険で高度な魔法については、イーニシュフェルトの里の中だけで独占していた。
それにあの頃の私は、里の中でも、大した発言権はなかった。
単なる若造の一人でしかなかった。
若造共に何を言われようが、長老達は考えを変えはしなかった。
お陰で、イーニシュフェルトの里の消滅によって。
里の中で進んでいた、魔導化学の研究も同時に、全て失われてしまった。
研究を覚えている人も、研究を記した書物も、消えてなくなった。
残っているのは。
私の頭の中にある記憶。
そして、ヴァルシーナちゃんの頭の中にある記憶のみ。
「…成程。進んだ魔導化学の知識の中で、ヴァルシーナが何を記憶し、何を使っているのか、特定出来ないってことですか」
「…そうなんだよ」
私の心を代弁してくれて、ありがとうナジュ君。
イーニシュフェルトの里の消滅と共に、ほぼ全ての魔導化学は失われた。
しかし、生存者の頭の中には、僅かながらでもその知識の片鱗は残っている。
私もそうだ。
その片鱗を頼りに、現在の魔導化学を発展させようとしている。
そしてその片鱗は、ヴァルシーナちゃんの中にもあるだろう。
ヴァルシーナちゃんは、私と同じことをしているはずだ。
失われた魔導化学の片鱗を、自分なりに研究し直し、自分に扱えるようカスタマイズしているはず。
故に。
彼女がどんな魔法を得意とし、どんな魔法を扱えるのか、正確に全て把握することは不可能なのだ。


