神殺しのクロノスタシス3

「前にも令月さん達が言ってましたが、奴らの縄張りはあくまでジャマ王国。我々だけに構ってる訳にはいかないでしょう」

「僕もそう思う。あの頭領が、異国の…得体の知れない女魔導師に、そこまでの支援をするとは思えない」

と、答える令月君。

そして。

「ヴァルシーナに、鬼頭を動かせるだけの交渉材料があれば…話は違うかもしれませんが。そこのところ、どうなんです?あなたの方が詳しいでしょう…。すぐりさん」

「…それを俺に聞く?…所詮捨て駒だった俺に」

「はい。捨て駒如何は関係ありません。ヴァルシーナが加わってからの『アメノミコト』の事情についてなら、あなたが一番詳しいでしょうから」

…イレースちゃん。

容赦ないね、君も。

「…はぁー…」

すぐり君は、大きな溜め息をついた。

「…すぐり君。答えたくないなら、無理には…」

彼にとっては、思い出したくない記憶に違いない。

だから、無理に聞き出そうとは思わなかった。

しかし。

「別に良いよ。大した情報は知らないからねー。ただ…あの頭領が、ヴァルシーナって女に『アメノミコト』の全勢力を貸す。それはないと思っていーと思うよ」

「…その根拠は?」

「信用してないから。頭領は、自分が手づから洗脳したり、拷問したり、自分を心酔する者しか信用しない。自分の下にいる者しか信用しない。だから、いくら交渉材料が良かろうと、ヴァルシーナを全面的に信用するってことは、まず有り得ないね」

…成程。

「そもそもそんな、海の物とも山の物とも分からない女に頼らなきゃ、異国に逃げ込んだ裏切り者の一人や二人も殺せない…なんて、『アメノミコト』の威信に関わる。ジャマ王国国内でそんなことが知られたら、良い笑い者だよ」

ヴァルシーナちゃん、海の物とも山の物とも知らない女扱い。

まぁ、ジャマ王国ではそうだろうね。

それに…。

「あの女が、進んで『アメノミコト』と手を組んだとはとても思えない。彼女の本命は、あくまで『カタストロフィ』だった。それが失敗したから、仕方なく異国のマフィアに接触したんでしょう」

と、ナジュ君。

私もそう思うよ。

誇り高い、イーニシュフェルトの里の一族なら…。

…野蛮な魔法を使い、人を殺し、弱者の血を啜って生きるような組織と、手を組むはずがない。

それなのに、ヴァルシーナちゃんは『アメノミコト』と手を組んだ。

それはつまり…彼女も、それだけ追い詰められているということだ。

彼女をそこまで追い詰めたのは…他でもない、この私なのだけど…。