神殺しのクロノスタシス3

ともあれ。

私達は、ナジュ君に事の次第を説明した。

ヴァルシーナちゃんが、羽久の身体に新しい人格を生み出すようけしかけ。

そして生まれた新しい人格の名が、レーヴァテイン。

レーヴァテインは、これまでの羽久の人格と違って、私に敵対している。

その為、レーヴァテインは羽久の身体の一部を切り取り、こっそりと魔法でそれを培養して、羽久と同じ容姿の肉体を手に入れ。

本体の羽久の身体から離れて、もう一つの新しい肉体に乗り移り。

羽久のフリをして、私を暗殺しようとした。

そこで、読心魔法ですり替わりがバレることを懸念し、ナジュ君を一番先に潰しに来たのだろう…と。

「あー、成程ね。それで真っ先に僕が狙われた訳ですか…」

「…ごめんね、ナジュ君」

謝ったって、ナジュ君の受けた苦痛が慰められる訳じゃない。

それでも、謝らずにはいられない。

「別に良いですよ。どうせ死なないんだし。むしろじわじわ殺されるより、一瞬でミンチになった方が、痛みを感じる暇がなくて楽です」

楽…って。

そんなはずはない。

ナジュ君は、ただ死に慣れているから、そう思うだけで。

一般人からしたら、耐え難い痛みを味わったはずだ。

「それで?今羽久さんは?」

「…まだ眠ってるよ」

ナジュ君を医務室に運んだ後、すぐ学院長室に戻ったが。

羽久は、まだ目を覚ましていなかった。

そして、今もまだ眠ったままだ。

ナジュ君が眠っていた隣のベッドで、ひたすら眠っている。

今はどちらの人格なのか…。

「…じゃ、ヴァルシーナとレーヴァテインは?」

「…分からない。逃げたよ」

「また逃げたんですか、あの女…。本当狡猾と言うか…」

…狡猾なのは、彼女じゃない。

私の方だ。

「絶対何かしてくるとは思ってましたが…。そうか、そうですか。羽久さんを利用しましたか…。よくもまぁ次々と、面倒なことばかり考えるもんですね」

「…」

「…それと皆さん、今、もう真夜中でしょ?帰って良いですよ。放っとけば、僕は勝手に再生するんで」

そんな。

「僕はここにいるよ。またあの、レーヴァテインってのが攻めてくるかもしれない」

「生憎俺達、夜型だからね〜。一日二日くらい、寝なくても平気だし」

と、令月君とすぐり君。

「また私の偽物が現れたら堪りませんからね。一緒に行動した方が賢明でしょう」

と、イレースちゃん。

「俺も付き合うぜ。どうやら聖魔騎士団の方には、何も手出ししてないみたいだからな。乗りかかった船だ。放ってはおけねぇ」

と、ジュリス君。

そして、天音君も。

「…身体は治りきってないんだから、まだ回復魔法が必要だよ」

皆して、離れる気はない。

勿論、私も。

「…頑固ですねぇ、皆さん」

「それは褒め言葉?」

「じゃあもう少し緩和策を。ちょっとだけ、学院長と二人きりにしてもらえませんか」

「…え」

「15分で良いので。それなら良いでしょう?」

顔を見合わせるオーディエンス。

そして。

「…良いでしょう。ただ、15分たったら強制突入するのでご了承を」

イレースちゃんが、一つ嘆息して折れた。

「まぁ15分くらいなら」

「何かあったら、すぐに呼べよ」

「ありがとうございまーす」

ナジュ君がそう言うと。

元暗殺者二人組、イレースちゃん、ジュリス君、天音君は、医務室から出ていった。

残されたのは、私とナジュ君と…眠ったままの羽久だけだ。

「…15分しか時間ないので、単刀直入に言いますが」

ナジュ君は、無言の私の代わりに、そう切り出した。

「自分のせいだと思ってますね、あなた」

…やっぱり。

読心魔法、脳みそ足りてなくても変わらずに使えるんじゃないか。