「あれ?」
「あの…ベッドの横」
すぐり君の、指差す先。
血塗れの、ベッドの傍に。
ゴルフボールくらいの赤い肉の塊が、コロンと落ちていた。
あれって…。
…形状からして、恐らく心臓だ。
じくじくと鈍い音を立てて、細胞分裂が始まっていた。
「…!再生しかけてるんだ…!」
気づくなり、天音君は血に汚れるのも構わず、カーペットに膝を付き、再生を促進する為の回復魔法をかけ始めた。
これほど引き裂かれた後でも、既に再生を始めているとは。
「…こんな状態になっても、死ねないんですね、あの人は」
「イレースちゃん…」
「不死身の身体というのは、きっと、私達が想像するよりずっと…過酷なものなんでしょうね」
そう言って。
イレースちゃんもまた、服が血で汚れるのも構わず、散らばった肉片を集め始めた。
少しでも、残った肉片を繋げれば…その分再生は早くなる。
令月君とすぐり君も、無言でイレースちゃんに続いた。
それはまるで、壊れたジグソーパズルのピースを掻き集めるかのようで。
…そして、何より耐え難いのは。
この悲惨な光景を作り出した原因は。
ナジュ君を、こんなにも苦しめて殺し、また死ねない絶望を抱かせたのは。
他でもない、この私のせいなのだという事実だ。
裏切り者。
レーヴァテインの…羽久の身体の、羽久の声で言われたあの言葉が、脳裏をよぎる。
私が裏切ったせいで、苦しむ人間が…一体何人いることか。
それなのに私は、どうして。
どの面をさげて、のうのうと生きていられるんだ?
「…っ」
堪えようのない感情が込み上げてきて。
しかし私は、それを必死に抑え込んだ。
悲嘆に暮れ、自分を責めるのは後回しだ。
とにかく今は、ナジュ君を助けなければ。
少しでも早く。
血塗れのカーペットに足を踏み入れるなり。
一瞬脳裏に、残酷な考えが浮かんだ。
彼が戻ってきてくれれば、読心魔法によって、羽久とレーヴァテインの区別がつくようになる。
どうして私は、こんなことを考えてしまうんだ?
この期に及んで私は、ナジュ君を自分の戦力の一つとしか考えてないのか。
私のせいで、こんなにも悲惨に破壊されてしまった彼に対して。
再生したら、また利用しようって?
…どうして私は、こんなにも醜い。
…。
…しっかりしろ、シルナ・エインリー。
分かっていたことだろう。
あの日、世界を裏切った日から。
「…ごめんね、ナジュ君」
君もまた、私の誤った選択の犠牲者なんだ。
心優しい、仲間思い、生徒思いの学院長。
その裏で私は、生徒や教え子、自分のもとにいる仲間達を利用し、自分の大切なものだけを守ろうとしている。
そんな、利己的な人間なのだ。
許して欲しい、とは言えない。
許されることではない。
だから、謝るなんて筋違い。
謝るくらいなら、あんな選択はしなければ良かった。
それでも私は、謝らずにはいられなかった。
「あの…ベッドの横」
すぐり君の、指差す先。
血塗れの、ベッドの傍に。
ゴルフボールくらいの赤い肉の塊が、コロンと落ちていた。
あれって…。
…形状からして、恐らく心臓だ。
じくじくと鈍い音を立てて、細胞分裂が始まっていた。
「…!再生しかけてるんだ…!」
気づくなり、天音君は血に汚れるのも構わず、カーペットに膝を付き、再生を促進する為の回復魔法をかけ始めた。
これほど引き裂かれた後でも、既に再生を始めているとは。
「…こんな状態になっても、死ねないんですね、あの人は」
「イレースちゃん…」
「不死身の身体というのは、きっと、私達が想像するよりずっと…過酷なものなんでしょうね」
そう言って。
イレースちゃんもまた、服が血で汚れるのも構わず、散らばった肉片を集め始めた。
少しでも、残った肉片を繋げれば…その分再生は早くなる。
令月君とすぐり君も、無言でイレースちゃんに続いた。
それはまるで、壊れたジグソーパズルのピースを掻き集めるかのようで。
…そして、何より耐え難いのは。
この悲惨な光景を作り出した原因は。
ナジュ君を、こんなにも苦しめて殺し、また死ねない絶望を抱かせたのは。
他でもない、この私のせいなのだという事実だ。
裏切り者。
レーヴァテインの…羽久の身体の、羽久の声で言われたあの言葉が、脳裏をよぎる。
私が裏切ったせいで、苦しむ人間が…一体何人いることか。
それなのに私は、どうして。
どの面をさげて、のうのうと生きていられるんだ?
「…っ」
堪えようのない感情が込み上げてきて。
しかし私は、それを必死に抑え込んだ。
悲嘆に暮れ、自分を責めるのは後回しだ。
とにかく今は、ナジュ君を助けなければ。
少しでも早く。
血塗れのカーペットに足を踏み入れるなり。
一瞬脳裏に、残酷な考えが浮かんだ。
彼が戻ってきてくれれば、読心魔法によって、羽久とレーヴァテインの区別がつくようになる。
どうして私は、こんなことを考えてしまうんだ?
この期に及んで私は、ナジュ君を自分の戦力の一つとしか考えてないのか。
私のせいで、こんなにも悲惨に破壊されてしまった彼に対して。
再生したら、また利用しようって?
…どうして私は、こんなにも醜い。
…。
…しっかりしろ、シルナ・エインリー。
分かっていたことだろう。
あの日、世界を裏切った日から。
「…ごめんね、ナジュ君」
君もまた、私の誤った選択の犠牲者なんだ。
心優しい、仲間思い、生徒思いの学院長。
その裏で私は、生徒や教え子、自分のもとにいる仲間達を利用し、自分の大切なものだけを守ろうとしている。
そんな、利己的な人間なのだ。
許して欲しい、とは言えない。
許されることではない。
だから、謝るなんて筋違い。
謝るくらいなら、あんな選択はしなければ良かった。
それでも私は、謝らずにはいられなかった。


