神殺しのクロノスタシス3

「…これは」

まず口を開いたのは、イレースちゃんだった。

「一体…何事ですか」

…本当にね。

この場にいる、誰もが思ってるに違いない。

私でさえ思ってるくらいなんだから。

けれど。

事態を把握し、共有するより先に。

確かめなければならないことがある。

「天音君とナジュ君の無事を、確かめないと」

この場にいない、彼ら二人の安否を確かめないことには…と。

思っていると。

「大丈夫ですか?」

「天音君…!」

つい今しがた、安否を確かめに行こうとしていた二人のうち一人が、自分から学院長室にやって来てくれた。

「良かった…!君は無事なんだね?」

「え、ぶ、無事って…?やっぱり、何かあったんですか?」

やっぱり?

「医務室にいたら、騒がしい…戦闘音みたいな音が聞こえたから、駆けつけたんですけど…」

「そうだったんだ…」

良かった。

どうやらレーヴァテインもヴァルシーナちゃんも、天音君には手を出さなかったみたいだ。

そして、もう一人。

「…事情は後で話す。とにかく…ナジュ君の部屋に行こう」

「ナジュさんの…?」

天音君に事情を説明してあげたいところだが、今はそんな暇はない。

それから。

「ジュリス君」

「何だ?」

「助けに来てもらって早々、悪いんだけど…。羽久を、見ててもらえるかな」  

「…そりゃ大役だな」

そうだね。

私達がナジュ君の無事を確かめに行っている間に、もし羽久が目を覚ましたら。

いや、羽久なら良い。まともに言葉が通じる。

だが、もし目を覚ましたのが、二十音だったら。

傍に私がいないと知ったとき、あの子がどうするか。どうなるか。

それを考えたら、この場を任せられるのは、ジュリス君をおいて他にいない。

「お願い、上手く宥めて。出来るだけすぐに戻るから」

「下手したら、俺はお陀仏だな」

「ごめん…。でも、君にしか…」

私に負けず劣らずの熟練した魔導師で、二十音のような…未熟な精神をした子供の扱いも、知っている。
 
下手に刺激すれば、二十音は誰彼構わず虐殺してしまうだろう。

だから…。

「分かったよ。早く行ってこい。こいつは俺が面倒見る」

「ジュリス君…!」
 
「良いから、早く行け。生憎、毎日相手してるもんで『子供』の扱いは慣れててね。あんたが戻ってくるまでの、時間稼ぎくらいはしてやれる」

『子供』だって。ベリクリーデちゃん。

本人に言っても、自覚ないだろうなぁ。

ともかく。

「…お願いね」

「あぁ、任せろ」

ジュリス君に、眠っている羽久を任せ。

私達は、ナジュ君の部屋に向かった。