神殺しのクロノスタシス3

―――――――…。

「…やめろ」

「羽久、落ち着け。あれがお前の人格の一つなのだとしても、あれとお前は別物…」

…うるさい。

「っ!ジュリス君離れて!!」

「っ!?」

うるさい虫を払おうとしたら、避けられた。

だが、そんなことはどうでも良い。

「…誰だお前」

私は、「それ」を見つめた。
 
私の身体の中で、勝手に何をしたんだ。

私の身体を勝手に使って、何をしようとしたんだ。

「…しーちゃんに、酷いこと言った」

聞いてたよ、私。

今お前、しーちゃんに酷いこと言ってたよね。

それを言うとね…そういうことを言うとね…しーちゃんは凄く悲しむ。

凄く、心が痛くなる。

それなのに。

何で、私の姿を勝手に使って、私のしーちゃんを、傷つけるの?

駄目だね。お前みたいなのは、生きていちゃいけないね。

お前みたいなのは…邪魔だね。

「…死ね」

「っ!皆離れて!」

しーちゃんが何かを叫ぶと、周りにいた虫達が散った。

都合が良い。

私が殺したいのは、この「私の偽物」だけだ。

しかし。

「…やはり出たか。化け物め」

「あ…?」

見覚えがあるけど、よく知らない女が現れた。

一人二人と…面倒なモノが増える。

「ヴァルシーナちゃん…!やっぱり、君の仕業か…!」

しーちゃんが、憎々しげにその女を睨んだ。

そうか。

この女も、しーちゃんの敵なんだ。

じゃあ殺そう。

「初動は失敗した。だが、これで終わりではない。このレーヴァテインは、紛れもなく二十音・グラスフィアの人格の一つだ。もっとも…目覚めさせたのは、私だがな」

「…!?君は、何をして…」

「お喋りは終わりだ。行くぞ」

何が「行くぞ」だ。

私が、しーちゃんの敵を逃がすと思ってるのか。

私は、懐中時計の蓋を開けた。

しかし。

「二十音!やめなさい!」

えっ。

しーちゃんが止めた。しーちゃんが怒った。

しーちゃんが。

その隙に、私の偽物と、しーちゃんの敵の女が、霧のように消えた。

「…っ!あいつら…」

「学院長、まだ追って…」

「駄目。動かないで、令月君もすぐり君も。誰も動かないで」

「…」

しーちゃんが、しーちゃんを取り巻く虫達にそう指示した。

…しーちゃん…。

凄く険しい顔をしてる。

知ってるよ。怖いんだよね。

さっきみたいな敵がいて、しーちゃんと私を脅かすから。

でも大丈夫。

私が殺す。しーちゃんの敵は、私が全部、

すると。

しーちゃんが、一変して優しい笑顔になった。

いつもの、優しい笑顔。

そして。

「…おいで、二十音」

他でもない、私を呼んだ。