神殺しのクロノスタシス3

―――――――…かろうじて。

かろうじて、私は死なずに済んだ。

「羽久」が私を貫こうとした剣は。

両側から、令月君の小太刀、すぐり君の黒いワイヤーによって絡め取られ。

私の身体に刺さることはなかった。

「…ちっ」

「羽久」は、苛立たしげに舌打ちした。

「誰かは知らないけど…暗殺には向いてないね、君」

令月君の目と声は、暗殺者のときのそれだった。

そして、すぐり君も。

「殺気、出し過ぎだよ?そんなんじゃ落第点だね〜」

…危ないところだった。

暗殺においては、この上ないプロである二人がいなければ。

今頃、私はあの剣に串刺しにされていたことだろう。

「…あなた、何者です?羽久さんじゃないんでしょう?」

イレースちゃんが、鋭い殺気を出しながら、杖を握り締めた。

「…」

「羽久」は答えない。

…。

「…これは、君の仕業なのかな」

私は、「羽久」が書き残したメモを摘んで、そう聞いた。

「ナジュ君はどうしたの?天音君は?」

「…」

この場にいない、もう二人の教師の名前を挙げても。

やはり、「羽久」は何も答えない。

「…君が何者なのかは、知らないけど」

私の命なんてどうでも良いけど。

私の羽久を騙し、イレースちゃんを巻き込み。

令月君やすぐり君に迷惑をかけ。

ナジュ君と天音君は、どうなってるのか分からないけど。

もし、この場にいない二人の身にも、何かが起きているのだとしたら。

そして、それを首謀したのが君なのだとしたら。
 
さすがの私も。

「…怒るよ?」

そのときの、私の殺気は。

この場にいる、誰よりも強かったに違いない。