神殺しのクロノスタシス3

「あー、まぁ…ねぇ…うん」

腕を組み、言葉に詰まるキュレム。

つまり、さっきルイーシュがハッキリ言ったことは、事実なのだ。 

「キュレム。この際だから、ハッキリ言ってくれ」

「んー…。まぁ、あんまり出鼻挫くようなことは言いたくないんだが…」

「構わないよ。むしろ、ハッキリ言ってくれた方が助かる」

変に、言葉を取り繕われてもな。

それくらいなら、ハッキリ言ってくれた方が良い。

すると。

「…分かった。じゃあ言うけど」

「あぁ」

「教えることは出来る。ただ、教えたからって身につくとは限らないし、そもそもこればっかりは、教えられて身につけるものじゃない」

…ハッキリ言ってくれ、と頼んだときから覚悟はしていたが。

結構、辛辣な答えが返ってきた。

「俺とルイーシュを考えてみなよ。元々は、余り者同士の即席ペアだっただろ?」

…そういや、そうだったな。

ルイーシュはイーニシュフェルト魔導学院に在学中の頃から、この性格で。

年に2回行われる、例の魔導大会でペアを組みたいと思う生徒はいなかった。

一方のキュレムは、あの頃はまだ魔弾使いではなく、学院内では落ちこぼれ扱いされていた。

そんな訳で、バーゲンセールで売れ残った二人の生徒…キュレムとルイーシュ…が、余り者同士、くっつくことになり。

それが意外に、上手いこと型に嵌ったものだから。

未だに、こうして一緒にいる。

「俺達は、お互いよく知らない間柄でペアになったけど…。その、今お宅らが組ませたいって言ってる生徒達は、元々面倒臭い因縁を持ってて、犬猿の仲だったんだろ?」

「まぁ…そうだな」

犬猿の仲って言うか…。

すぐりの方が、一方的に令月を嫌ってたんだけどな。

「そんな二人が、いきなり今日から一緒に戦いますって言って、お互いに背中を合わせられると思う?」

「…でも、ほぼ初対面だったお前達とは違って、あいつらはお互いの手の内を知り合ってる。その点、やりやすいんじやないのか?」

「さて、どうかね…。手の内を知ってることも大事だけど、俺に言わせれば、呼吸を合わせることの方がずっと大事だよ」

…呼吸…。

「お互いどれだけ強い武器を持ってても、呼吸が合ってなきゃ話にならない。さっき言ってたじゃん、足の引っ張り合いになってるって」

「…あぁ、なってる」

ナジュ一人に、良いように翻弄されるくらいには。

「つまり、お互いの手の内を知ってても意味ないんだよ。呼吸が合ってないから。要するにまぁ…お互いを信頼してないってことだな」

信頼。

信頼…か。

「信頼…し合ってるように見えるけどな」

「言っとくけど、普段の関係で考えちゃ駄目だぞ。いくら普段仲良しでも、戦いの場じゃ別だ。俺だって、戦場ではルイーシュを100パー信用してるけど、普段の生活については、全然信用してない。見てみろこれを」

キュレムの指差す先で、ルイーシュはキュレムのケーキの上に乗ったフルーツを、勝手に摘まみ食いしていた。

…うん。

これは信用出来ないな。

「そして呼吸を合わせるってことは、教えて身につくものじゃない。経験と慣れ。これがないと無理。二人で何度も訓練を経験しまくって、お互いの戦い方に慣れて、実戦での信頼を積まなきゃ」

「…そうか…」

俺が思っている以上に、二人で戦うのは難しい、ってことか。

今のところあいつら、連帯感ゼロだからな。

それはどちらが悪いという訳ではなく、ただ経験不足だから。

そして、まだお互いを信頼しきれていないから…。

無意識に、心の中にあるのだ。

「本当に、この人は自分の背中を守りきってくれるのだろうか?」という疑問が。

…難しいな。

ついこの間まで、殺し合う仲だったのだから。

仕方ないと言えば、仕方ないのだが…。

「…って、まぁここでうだうだ喋ってても仕方ないな」

そう言って、キュレムが立ち上がった。