神殺しのクロノスタシス3

「あぁ。実は、面倒見てやって欲しい生徒がいるんだ」

「生徒…?今夏休みでしょ?皆実家に帰ってのんびりしてるんじゃないんですか?あー俺ものんびりしたい」

自分の欲望が見え隠れしてるが、それは置いといて。

「帰る場所のない生徒もいるんだよ。聞いてはいるだろ?令月とすぐりのこと」

「…?」

悲報。

ルイーシュ、令月とすぐりを覚えていない。

「…話を真面目に聞くということを知らないから、コイツ。あのなルイーシュ。先日、『アメノミコト』とかいう暗殺者集団が攻めてきたろ?そこの元暗殺者を二人、学院で預かってるんだよ」

俺達の代わりに、キュレムが説明してくれた。

有り難い。

「あぁ、思い出しました。確か、学院長の首を狙って、遥々ご苦労様なことにジャマ王国からやって来たのに、あっさり撃退されたどころか学院長の舌先三寸で懐柔され、更にその裏切り者を殺す為に再び暗殺者を送り込んだけど、やっぱり撃退されて懐柔されて、あっさり学院長の罠に嵌って、生徒にされたっていうあの可哀想な暗殺者達のことですか」

その通りだけど。

その通りなんだけど。

俺の横で、シルナが無言で突っ伏して半泣きだから、もうちょっとオブラートに包んで欲しかったな。

舌先三寸って。

「その憐れな生徒が、どうかしました?」

「犬猿の仲だった二人なんだが、この度仲直り、更にお前達みたいに、ペア組んで共闘することに決めたらしいんだ」

「へー、ペアで戦うんですか?変わってますね」

自分に言ってるのか?

「だが、元々犬猿の仲で、おまけに一人で戦う訓練しかしてこなかったもんだから、今のところ、お互いの足の引っ張り合いにしかなってない」

「まぁ、そうなるでしょうね」

「そこで、お前達に助言と助力を求めたいんだが」

「ペア組むのやめて、今まで通りお互い一人で戦うことにすれば、万事解決しますよ」

意地でも自分は何もしたくないという、強い意志を感じる。

ルイーシュの横で、キュレムが天を仰いでいる。

「…ルイーシュ」

「何ですか、キュレムさん」

「本末転倒って言葉の意味、知ってるか?」

「皆一切合切面倒なことは投げ捨てて、動物園のパンダのようにダラダラ過ごそう、って意味ですよね」

お前の頭の中の辞書、どうなってるの?

ほぼ全ての言葉の意味、それだろ。

キュレムお前、いつもこんなのと一緒に任務こなしてるのな。

偉いよお前は。

「…ルイーシュの戯言はともかく」

キュレムが仕切り直して、そう言った。

「つまり俺達に、二人一組の戦い方を指南して欲しい、ってことね?」 

「そうだな」

そういうことだ。

「駄目か?」

「…駄目とは言わんけど…。また難しいこといってくれるねぇ」

そりゃ申し訳ない。

「でも、俺が知る中で、お前達以上に熟練したペアはいない。だから、お前達に頼みたい」

実力的にも、令月とすぐりに匹敵する…あの二人に教えられる魔導師は、魔導部隊大隊長のキュレム達くらい。

自分より能力の劣った者に教えられても、二人共納得しないだろうし。

「お褒めに預かり光栄。ではあるけども…。うーん…」

ルイーシュは、明らかに嫌そうな顔。これは予測済み。

しかし、意外なことにキュレムも、難色を示していた。

「そんなに難しいか?」

「多分、羽久が思ってるより、三倍は難しいよ」

…そうなの?

「何て言ったら良いのかねぇ…。そりゃまー、俺もルイーシュと組んで長くなるけど、そうだなー…」

「キュレムさん、ハッキリ言ってやれば良いじゃないですか。教えて、簡単に連携取れるようになったら苦労しねーよ、って」

「…お前はハッキリ言い過ぎだ」

教えて、簡単に連携取れるようになったら、苦労しない…か。

俺は、良い考えだと思ってキュレム達を呼んだが。

もしかして、俺は浅はかだったのだろうか。