神殺しのクロノスタシス3

「…マジで?」

「本当にっ?本当に?二人共、友達になるって言ったの?」
 
「口では言ってませんが、二人の心の中を覗いたら、そう書いてあったので」

…マジかよ。

「僕も驚きましたよ。今朝早く、僕がまだリリスとイチャついてるときに、二人が窓から訪ねてきましてね」

要らん情報まで言わんで良い。

そして奴らは、ちゃんとドアから入るということを覚えろ。

窓は出入り口ではない。

「二人で共闘して、学院長を倒すことに決めたから、訓練に協力してくれと言われたので、僕は快く承諾したんです」

「ちょっと待っておかしい。何でそうなるの?ねぇ、何でそうなるのっ?」

「そうだったのか…。それで朝から稽古場に入り浸って…」

「羽久!?納得しないで!異議を申し立てて!」

うるせぇ。

二人が仲良くするって言ってんだ。お前は潔くその礎となれ。

本望だろ。

「しかし、二人共現状、連帯感ゼロなので。学院長どころか、僕に掠り傷一つつけられない有り様です」
 
「うーん…」

…それは、まぁ…仕方ないと言えば、仕方ない。

令月もすぐりも言っていたように、『アメノミコト』時代は、誰かと共闘するという経験がなかった。

基本的に、暗殺は単独任務だ。

それは、暗殺という秘匿性の高い任務を遂行する為に、当然のことだ。

暗殺とは、誰かに隠れて、ターゲットにも周囲にも気づかれず、こっそりと行われ、跡を残さないよう証拠を隠滅する仕事。

暗殺者の数が増えれば、隠す手間も、証拠を隠滅する手間も、倍増する。

おまけに、暗殺が露見するリスクも格段に増えることになる。

すぐりは『玉響』と共に、ルーデュニアに攻め込んできたが。

あのときだって、結局二人は共闘することなく、それぞれで襲ってきたし。

基本的に、この暗殺者達。

誰かと共闘するということに、全く慣れていない。

だから、お互い足を引っ張ることになる。

当たり前だ。

今までずっと、「個」の強さばかりを求められて、そればかりを伸ばしてきた。

いきなり誰かと組んで戦え、と言われても。

まず、その誰かと呼吸を合わせることさえ難しいだろう。

個々人は充分強いんだけどな。

強い者と強い者を組み合わせたからって、更に強くなるとは限らない。

この二人の場合、むしろ弱体化している。

…難しいな。

だが、そんなことは今はどうでも良い。

「そ、そっか…!二人共友達になったんだね。良かった…!」

そう、そっちの方が大事だ。

勿論、仲良くしようと決めて、すぐに仲良くなれる訳じゃないことは分かってる。

でも、それがどうしたというのだ。

絆というものは、一朝一夕で築けるものではない。

そしてこの二人は、その絆への一歩を、ようやく歩き始めたのだ。

それ以上に大事なことが、他にあるだろうか…。

「…あ、俺良いこと思いついた」

「何?」

「相手は学院長なんだから、また前みたいにチョコレートにデスソースを仕込んで、悶えてる隙に首を獲るのはどう?」

「成程、やってみる価値はありそうだね」

…。

…それ以上に大切なことは…他にない。うん。

「ちょっと二人共!?仲良くなるのは良いんだけど…何を企んでるの!?やめて怖い!あ、ほらチョコ!チョコあげるからほら!」

シルナは青ざめながら、必死にチョコレートで二人を懐柔しようとしていた。

…まぁ、頑張れ。シルナ。

それよりも。

「共闘…。二人で連携…か」

「んん〜?何か企んでますね、羽久さん」

「人聞きの悪いことを言うな」

企んでるんじゃねぇ。

共闘の道を歩き始めた令月とすぐりの為に、ちょっと思いついたことがあるだけだ。