神殺しのクロノスタシス3

シルナと二人、稽古場に方に向かってみると。

稽古場の外からでも聞こえるほどの、激しい戦闘音が響いていた。

「…!?」

思わず、シルナと顔を見合わせた。

実技の授業では、まず聞くことはないほどの激しい戦闘音。

これは、稽古や訓練などという可愛いものではない。

本物の戦闘だ。

そして、今学院にいる者の中で、そんな本物の戦闘を繰り広げられる者は…。

「ま、まさか令月君、すぐり君と喧嘩してるのかな!?」

俺が思っていたことを、シルナが顔を真っ青にして言った。

とうとう、恐れていたことが起きたかと。

多分ナジュが焚き付けたのだ。もういっそ殺し合うつもりでやり合って、殴って解決しろ、と。

あいつなら言いかねん。

今度こそ、奴はクビだ。

あの二人に、マジの殺し合いをさせたら、大怪我どころでは済まない。

即座に止めに入ろうと、俺とシルナは急いで稽古場に走り。

勢いよく、その扉を開けた。

「令月君!すぐり君!落ち着…」

勃発しているであろう喧嘩を止めようと、稽古場に足を踏み入れると。

そこでは、確かに戦闘が行われていた。

しかし。

それは、俺達が予想していたものではなかった。

「はいはい、僕を落とせないようじゃあ、まだまだですね〜」

「くっ…!」

「ちょっと!『八千代』そこ邪魔!」

「あ、ごめん」

「と、仲間割れしてる間にもう一撃」

「『八千歳』!」

「ぐっ…!好きには…」

「させないですか?そこに糸張ってますもんね。引っ掛かりませんよそんなの」

「また読心…!ズルいなぁもう!」

「いやいや、2対1なんだからこれくらい正当でしょ」

「『八千歳』!すぐ助け…」

「馬鹿!来なくて良いからさっさとナジュせんせーを…」

「目の前で作戦会議ありがとうございます。はいおしまい」

「わーっ!」

「あうっ…」

稽古場に倒れ伏す、令月とすぐり。

を、余裕の表情で見下ろす、ナジュ。

…いじめ?

「いじめとは失礼な。稽古つけてあげてただけじゃないですか」

すかさず心を読まれた。

稽古をつけてあげてた…?

「はい、これで5戦0勝5敗な訳ですが、5連敗した今のお気持ちはいかがですか?」

「良い…訳、ないでしょっ」

「うぅ…悔しい…」

「ですよねー!まだやります?泣きの何回目ですかね、ふふふふ」

敗者に鞭打っていくスタイル、ナジュ。

とりあえず…喧嘩している訳ではないようだが…。
 
これは一体…どういうことなんだ?

と、考えていると。

「お?お二人共、後ろをご覧下さい。ターゲットが来てますよ」

ターゲット?

令月とすぐりが、しゅばっ、とこちらを振り向いた。

びっくりした。

「さぁ奇襲攻撃です。今のあなた達が彼に通用するか試す、絶好のチャンスですよ」

「…!分かった、行こう『八千歳』」

「よし!行くよ『八千代』。学院長の首を獲ろう」

「えっ、私?」

あ、なんかヤバそうな匂い。
 
俺はシルナを置き去りにして、瞬時にその場を飛び退いた。
 
と同時に、シルナ目掛けて、令月とすぐりが飛びかかってきた。

「学院長!覚悟!」
 
「恨みはないけど、刈らせてもらうよ!」

「えぇぇぇぇ!?ちょ、嫌、何!?え、羽久助けぇぇぇぇ!?」

…シルナ。

お前のことは…忘れないよ。