神殺しのクロノスタシス3

…それでも。

『八千歳』が腹を割って話そうとしてくれてるのは、伝わってくるから。
 
じゃあ僕も、腹を割って話そう。

「…まず、たくさん魔法使えて羨ましい」

「…あぁ…魔導適性のことね…」

ムカッ。

「ほら、その顔」

「は?」

「何だ魔導適性のことか、って『八千歳』は軽く思ってるのかもしれないけど、僕はその魔導適性の有無だけだも、充分『八千歳』が妬ましいよ」

「…」

そう、妬ましい。

羨ましい。憧れる。

「色んな魔法使えて羨ましい。僕はいつだって、同じ戦い方しか出来ない。『八千歳』は何もなくても糸を出せるけど。僕は刀がないと何も出来ないのに」

刀がなかったら、僕、どうやって戦うの。

徒手空拳しかないじゃないか。

『八千歳』みたいな器用な魔導師相手じゃ、良いカモにされてしまう。

「それと、学校にすぐ溶け込めたのが羨ましい。部活なんて、僕は入ったことない。どの部活に入って良いのかも分からない」

「あれは…たまたまクラスメイトがいたから…」

何それ。

「僕にだってクラスメイトはいるよ。部活に誘われたこともあるけど…よく分からなくて、断った。だって僕は、他の生徒達と違って、ちゃんとした魔導適性がある訳じゃないんだから」

いつだって、「コイツ、力魔法しか使えないの?」って気づかれるんじゃないかと怯えてる。

皆優秀な魔導師の卵なのに、僕は力魔法しか使えない。 

『八千歳』なんて、自分で魔法を編み出してる。

そんなこと、僕には出来ない。羨ましい。

僕にもそんな力があれば。

守られるだけじゃなくて、もっと強くなって、学院長達の為に戦えるのに。

「それに、『八千歳』は物知りだよ」

「…何処が?」

「花や野菜の育て方を知ってる」

「…それは園芸部に入ったからだよ。そうでもなきゃ、俺だって野菜の育て方なんて…」

「それに、学校に溶け込むのも早かった。僕、特定の友達なんていないよ」

「…いや、でも…俺も、ツキナ以外に友達はいないよ?」

でも、一人いるじゃん。

僕なんか、一人もいないのに。

ユイトは、ルームメイトであって、友達って関係じゃないし。

「僕は『八千歳』が羨ましい。『八千歳』は僕が羨ましいのかもしれないけど、僕だって『八千歳』が羨ましい。『八千歳』は充分強くて優秀なのに、『八千歳』が僕より下だって、勝手に自分を卑下してるのがムカつく」

「…」

「自分の方が劣ってるなんて、そう思うのはやめて。僕は君が劣等感を抱く度に、惨めな気分になるんだ」

僕は、『八千歳』を羨ましがらせるものなんて持ってない。

それなのに『八千歳』は、自分の方が劣ってると思い込んでる。

やめて欲しい。

僕だって、本当は大して強くもないのに。

『八千歳』の方が、ずっと強くなれる可能性を持ってて、僕にとっては脅威なのに。

いつ追い抜かれるんだろう。『八千歳』は僕よりずっと先に行ってしまうんだろう、って思うと。

「…妬ましいよ、君が」

昔から、ずっとそうだった。

僕が歩みを止めたら、君はあっという間に僕を越えてしまうだろう。

だから僕は走り続けた。

僕を追い抜いて、走っていく君の背中を見つめていることしか出来なくなるのが、怖かった。

そう思うと。

あまりに惨めで、悔しかったから。