神殺しのクロノスタシス3

…深夜に。

『八千歳』が訪ねてきた。

「…どうしたの?」

「…話つけに来たんだよ」

話をつけに…?

「何の話?」
 
「あの鬱陶しい、俺と『八千代』の仲良しプロジェクトとかいう話」

…あぁ。

その一環で、色々やらされてたんだっけ。

昼間の訓練試合も…。

それについては、僕も謝らなきゃならないことがある。

「ごめんね。なんか、僕…無意識に手加減してたみたいで」

「…」

「それで『八千歳』の気分を悪くしちゃった。ごめんね」

「…俺は君の、そういうところが凄く嫌いだよ」

えっ。

謝ったのに、ますます怒らせてしまった。

「それに、自分だけが手加減してたみたいな言い方が気に入らない。手加減してたのは俺も同じなんだから、自分だけ手ぇ抜いてましたみたいな態度、やめてくれる?」

「…ごめん…」

僕は何を言っても、『八千歳』を怒らせてしまうのだろうか。

どう言ったら良いんだろう。

「…僕がいなければ」

「は?」

「僕がいなければ…『八千歳』は、もっと幸せに生きられたのかな」

僕がいなければ。

『八千歳』は頭領のお気に入りになって、僕に対する劣等感もなく…。

しかし。

「馬鹿じゃないの?」

『八千歳』は、鼻で笑った。

「あのねー、俺が何でこんなに強くなったと思う?」

「それは…頭領の役に立つ為に」

「違うよ。君を越えたかったから。君を踏みつけにしたかったから」

…踏みつけ…。

「僕を踏みつけにしたら、『八千歳』はそれで満足するの?」

「いいや、満足しない。だって、今日踏みつけにしたけど、全然面白くなかったし」

確かに。

僕、今日『八千歳』に背中踏まれた。

「…悔しーけど」

『八千歳』は、僕の隣に腰を下ろした。

「君がいたから、多分俺はこんなに強くなれた。君がいなかったら、俺には強くなる理由がなかった」

「…」

「そーいう意味では、まぁ…感謝はしてるよ」

「…」

…そうなんだ。

僕は、無意識に『八千歳』の役に立っていたのか。

なら、良かった。

しかし。

「それでも届かない。どんなに『八千代』に勝とうとしても、踏みつけにしてやろうと思っても、届かない。君は、俺よりずーっと先のところにいる…」

「そんなことはないよ。『八千歳』だって充分…」

「知ってるよ。でも俺がそう思い込んでるってだけ。ナジュせんせーにそう言われた」

…不死身先生に?

昼間、不死身先生が『八千歳』を宥めに行くって言ってたけど。

二人は、どんな話をしたんだろう?

結構、言葉キツいときあるからな、不死身先生…。

「ナジュせんせーがさぁ、『八千代』は俺を羨ましがってるって言ってたんだけど」

えっ。

「俺の何が羨ましーの?」

「…」

…不死身先生、そんなこと言ったの?

あんまり、口に出して言いたくはないんだけどな…。

…悔しいから。