神殺しのクロノスタシス3

「たった今、あなたの知能は幼稚園児以下だと証明された訳ですが、気分はどうですか?」  

「…良い訳ないでしょ」

だろうね。
 
「でも、分かったでしょう?」

「…」

「自分が、いかに矮小な価値観で物事を考えているか。イーニシュフェルト魔導学院の制服を着ていながら、あなたの中身は、未だに『アメノミコト』にいたときのままなんですよ」

そりゃ、ずっとそこで生きてきたんだから、当然と言えば当然なんだけど。

「…だから、何なの?」

すぐりさんが、力なく呟いた。

「だから『八千代』と仲良くしろって?過去の因縁なんか忘れろって?そんなの、無理に…」

「無理でしょうね。だから僕は、令月さんと仲良くしろ、とは言いません。どうやったって、嫌いな人はいますし。生理的に無理な人っていますし」

理由は分かんないけど、コイツだけは無理!って人。

いない?たまに。

何人かはいるもんだよ。誰しも。

「だけど年長者の僕から、二つアドバイスさせてください」
 
「…二つもあるの?」

たった二つじゃないか。聞いてくれよ。

「一つ。あなたと令月さんは恐らく、ジャマ王国の『アメノミコト』ではなく、ルーデュニア聖王国イーニシュフェルト魔導学院で出会っていたら、きっと仲良くなれたでしょう。友達にもなれたでしょう。あんな因縁さえなければ、あなた達はきっと、親友になれていたと思いますよ」

「…」

まぁ、そんなこと、今考えたって仕方ない。

出会い方をやり直すなんて無理だから。

そして。

「二つ。あなたと令月さんは、過去の因縁を抱えてても、それでも友人になれる可能性は残ってます。あなたに今、その気がないだけで」

「…何で、そう言い切れるの?」

「すぐりさんがずっと、令月さんのこと嫌いって言ってるからです」

「…意味分かんないね。嫌いなんだから、友達になんてなれる訳…」

「嫌いだからですよ。あなたは令月さんを嫌いだとは言うけど、憎いとは言ってない」
 
「…!」

気づいてたか?

気づいてなかったんだろうな、その様子じゃ。
 
でも、そうなんだよ。

この人、令月さんを毛嫌いしてるけど。

でも、憎んではいない。憎いとは言ってない。

そして僕は、そんな二人が羨ましい。

「嫌い同士は、時間をかけて関係を築き直せば、いつかは仲良くなれる…可能性がある。でも、憎んでたら無理です。腹の底で憎しみを抱いてる相手と、心から親友になることは出来ない」

僕と天音さんが良い例。

天音さんは大人だし、性格も優しいから、普段は僕への憎しみなんて、全く感じさせない。
 
だけど、腹の底に、いつもかすかに残っている。

ほんの少しだけ、わだかまりを抱えている。

天音さん自身は無意識だ。本人にそのつもりはない。

本人がそう言ったように、僕を許してくれている。それも分かる。

だけど、心の奥底。その深くの、ほんの隅っこに。

僕への憎しみがある。僕にはそれが見える。

それは仕方ない。僕はあの人に、あの人の大切な人達に、憎まれて当然のことをしたのだから。

だから、僕はきっと、これから何百年、何千年とたとうと。

天音さんと、何のわだかまりもない、心からの親友になることは出来ないだろう。

悲しいけれど、それは僕が悪い。身から出た錆。

でも、令月さんとすぐりさんは違う。

すぐりさんは令月さんを嫌ってはいるけど、憎んではいない。
 
これは大事なことだ。