神殺しのクロノスタシス3

「令月さんの方が、速いですしね。攻撃もシンプルだし。暗殺者としては、令月さんの方が上でしょう」

「だから、いちいち言われなくても分かってるって、」

「まぁ最後まで聞いてくださいよ。でもそれはあくまで、『暗殺者としては』令月さんの方が上ってだけの話です」

「…?」

分かってないな?

やっぱり、鬼頭の価値観に囚われてる。

「あなたが、鬼頭に役立たずの落ちこぼれ扱いされたのは、『暗殺者として』令月さんより下だったからです。鬼頭は暗殺者集団の頭領なんだから、人間の価値を『暗殺者として』しか見ないのは当然です」

「…」

「別に、人間としての価値を比べられた訳じゃない。あなたも令月さんも、もう暗殺者はやめたんだから、『暗殺者として』の価値なんて、どうでも良いことです」

酷いことを言うようだが。

でも、事実だ。

「あなたの劣等感って、凄く馬鹿馬鹿しいです。もう暗殺者はやめたのに、未だに暗殺者として令月さんに勝とうとしてる。それで勝てたら嬉しいですか?もう暗殺者でもないのに?」

「…うるさいよ」

すぐりさんは、ポツリと言った。

「うるさいよ。うるさいよ!なんも知らない癖に!俺がどれだけ『八千代』と自分を比べて、『八千代』に勝って、それだけが自分の存在理由だと信じて生きてきたか、知らない癖に!」

「はい。あなたの気持ちなんて、僕、全然分かりません」

すぐりさんの気持ちなんて、すぐりさん本人でなきゃ分かるはずがない。

「逆ギレしないで欲しいですね。じゃああなたには、僕の気持ちが分かるんですか?不死身の身体で、恋人に会いたいが為に、何百年と死に場所求めて彷徨ってた僕の気持ちが」

「っ、それは…」

「分からないでしょう?僕もあなたの気持ちは分かりません。今は心も読んでませんし。推し量ることしか出来ません」

そう、推し量ることしか出来ない。

でも、それが相当辛くて、苦しかったってことだけは分かる。