神殺しのクロノスタシス3

そうかぁ。

子供だから、子供っぽい懐柔作戦で行けるかと思ったが。

そこまで子供じゃなかったか。

仕方ない。

じゃ、もう少し大人っぽい話をしようか。

「ねぇ、すぐりさん」

「…何さ」

「そんなに嫌いですか。令月さんのこと」

「嫌いだよ」

即答だった。

本当に嫌いなんだろうなぁ。

でも。

「何で嫌いなんですか?」

僕が、そう尋ねると。

すぐりさんは、青天の霹靂みたいな顔で固まった。

「何でって…何で…それは…」

「自分より強くて、自分より頭領様に気に入られてたから?だから気に食わなかった?」

「…」

そうなんだろうね。

本当に心読んでないから、分からないけど。

「でも令月さんの方は、すぐりさんを嫌ってはいませんよ。むしろ、あなたと仲良く出来たら良いと思ってます」

これは、令月さんの心を読んで得た情報だから、確実だ。

「…『八千代』はそーいう奴だよ。人の気も知らないで…」

「あなたもそうじゃないですか」

「…は?」

「すぐりさんだって、仲良くなりたいという令月さんの気持ちも知らないで、一方的に嫌いだ嫌いだって、言ってるじゃないですか」

「…」

嫌なことを言う奴だ、と思ったろう?

僕、あなた曰く汚い大人だから。

「もう何度も、誰もが言ってますけどね…。すぐりさんにはすぐりさんの良さがあり、令月さんには令月さんの良さがある。そしてそれは、お互いが持つ天性の才能であって、それぞれ尊重されるべきものです」

「…」

「それでもあなたは、自分が令月さんより劣っている。と、思い込んでる。だって頭領様に言われたから。でしょ?」

…ものすごーく、渋い顔して。

無言だけど、それは肯定の意で良いよな?

「皆違うよって言ってるのに、頑なに自分は劣ってる劣ってると思い込んでる」

周りがどれだけ、違うよって言ったって。

本人が思い込んじゃってるんだから、周りがいくら、何を言おうが意味がない。

だから、僕は違う観点からアプローチを試みる。

そんなに、自分が令月さんより劣ってると思い込みたいなら。
 
「そうです。あなたは確かに、令月さんより劣ってますよ」

学院長もそう言ってただろう。

「…そーだよ。今更言われなくても分かってるよ」

不貞腐れてるし。

何だ、否定して欲しかったのか?

そんなことないよ、すぐり君にはすぐり君の良いところがあるよ、って言ってくれたろうね。

僕もそう思う。

でも、その返事じゃ気に入らないってんなら。

僕は、すぐりさんのその考えを認めよう。

「自分は『八千代』より劣っている亅という、その考えを認めよう。

あなたがそんなに、劣等感に縛られたいなら。

縛られとけば良い。それは本人の勝手だ。