神殺しのクロノスタシス3

そうだと思った。

鬼頭夜陰は当然、知っているんだろうが。
 
駒の一つに過ぎない暗殺者達に、ターゲットの個人的な情報など、与える必要はない。

余計な情を抱かせてしまったら、暗殺に支障が出るからな。

「その賢者様が、学院長なの?」

「そうですよ」

「…『八千代』は?そのこと知ってるの?」

「さぁ、知ってるんじゃないですか?あの人鋭いから。とはいえ、知っているとしても、それほど詳細には知らないでしょう」

って言うか。

子供にするような話じゃないし。

「…学院長も大変なんだねー」

だって。言われてるよ学院長。

意外と軽い反応だ。

「それで、そんな色々不幸な人の話を聞かせて、俺に何を言いたい訳?」

「そんな色々不幸な人の話を聞いてたら、自分の悩みなんて、超どうでも良いことのような気がしません?」

「しないね」

駄目だった。

ここまでつらつらと、頑張って長話したのに。

子供って残酷だなぁ…。

まぁ、皆自分のことで精一杯だからね。

他人の不幸なんざ、知ったことじゃないよね。

僕も、自分が不幸だったときは、他人の不幸なんてどうでも良かったし。

たかだか、生まれて十数年の子供の悩みなんて、と思うかもしれないが。  

たかだか、生まれて十数年の子供の悩み一つで、自殺する子だって大勢いるんだし。

世の中、ろくでもないことしか溢れてないし。

比率としては、ろくでもないことが八割、良いことが一割ってところかな。

残りの一割は何かって?

どうでも良いことだよ。

そんな世の中で、幸せいっぱいで生きていられる人間が、どれほどいる?

いるなら会ってみたいね。

皆何かしら、苦しいことや辛いことを抱えて生きてる。
 
誰もが皆、この世で自分が一番不幸だと思いながら。