神殺しのクロノスタシス3

料理。

成程考えたなぁ。

一緒に協力して、一つの食べ物を作り上げる。

これほど仲良くなれる方法が、他にあるだろうか。

ナジュの数百倍はマシだよ。

「料理…?」

「そう。今日は二人に、ハンバーグを作ってもらおうと思うんだ」

天音はそう言って、ハンバーグのレシピが書かれた冊子を渡した。

「僕は手を出さないし、口も挟まない。二人だけで、協力して作ること。僕は保健室にいるから、出来上がったら呼んでね。二人で協力して、美味しいハンバーグを作ってね」

成程。
 
あくまで自分は口を出さず、見守ることもしない。

二人で試行錯誤させ、その過程でお互いの相互理解を深めさせようと。

下手に口を挟むと、また不仲が生じかねないからな。
 
これは良い判断かもしれない。

何度も言うが、ナジュより数百倍はマシ。

「材料は、冷蔵庫に用意してあるから。じゃあ頑張ってね」

天音はそう言って、二人を調理室に残し、立ち去った。

が、今日のシルナ分身、シルナトノサマバッタは、調理室の隅に隠れて、二人の様子を実況中継する。

ごめんな。

「料理だって。『八千代』料理したことある?」

「ないなぁ」

「だよね〜。そんなことだろうと思ってたよ『八千代』は」

初っ端から、毒舌が炸裂してるんだけど?

これから仲良くクッキングする仲とは思えない。
 
しかも。

「じゃあ『八千歳』は、料理したことあるの?」

「え?ある訳ないじゃ〜ん」

お前もないんかい。

令月を馬鹿に出来る立場じゃねーだろ。

「とにかく始めよっか〜」

「うん、そうだね」

とりあえず、やる気はあるようだ。

それは良かった。

「…で、『八千代』」

「何?」

「ハンバーグって、何?」

「僕にも分からない」

悲報。

ジャマ王国出身者、ハンバーグを知らない。

マジで?

そうか。こいつら、そもそも食べるということをほとんど経験してないから。

食べたことがあったとしても、それが何の料理なのか、材料とか料理名とか、全然知らないのだ。

「よく分からないけど…。とりあえずレシピがあるから、その通りにすれば良いんじゃないかな」

「ふーん…。まず最初の工程は?」

「えぇと…玉ねぎを刻む」

「玉ねぎなら知ってるよ。育てたことあるもん」

そう言って、すぐりは冷蔵庫から、玉ねぎを取り出した。

おぉ、さすが園芸部。

最低限の野菜の名前は知ってるようだ。

「それを刻むの?」

「うん。はい」

「分かった」

令月は、何故かずっと持ち歩いている…。

…小太刀に、手を伸ばした。

おい、お前まさか。

令月は、目にも留まらぬ速さで、両手の小太刀を抜き。

玉ねぎを、木っ端微塵に切り刻んだ。

包丁とまな板を使ってください。

つーか、まず玉ねぎの皮を取れよ。

皮ごと微塵切りにしたぞ。

「切れたよ」

やり遂げました感出してんじゃねぇ。

すると、すぐりはボウルの中の玉ねぎを見下ろし。

「えー、なんか荒くない?」

「そうかな?」

「だって、レシピに微塵切り、って書いてあるよ?これじゃ微塵じゃないでしょ」

いや、もう充分微塵切り出来てるから。

「もっと細かく…きっと、肉片の欠片も残さない感じにするんだよ」

それはペーストでは?

と思ったら。

すぐりは、お得意の糸を両手に張り巡らせ。

一瞬で、微塵切りされた玉ねぎを、更に完膚なきまでに粉微塵にした。

ほぼペースト。

「こんなもんで良いでしょ」

「そうだね。なんか目が痛いけど気のせいかな」

「俺も痛いけど、多分気のせいだよ」

「そっか」

…。

…既に先行き不安なんだけど、これ大丈夫か?