神殺しのクロノスタシス3

ナジュも俺もシルナも、無言であった。

この子達は、一体何を話しているのだろう。

「橋の下…?」

「そーだよ。それに、俺もよく親に言われたよ〜?『お前は橋の下から拾ってきた子なんだ』って」

それ、親が子供に言っちゃいけない言葉あるある。

「だから赤ん坊ってのは、橋の下に落ちてるものなんだよ」 

「そうなんだ…。『八千歳』は物知りだね」

「でしょ〜?」

知識において令月を上回ったと、ご満悦のすぐりだが。

残念ながら、その知識は間違ってる。

『アメノミコト』では、まともな性教育も受けられないのか。
 
「…ん?でもさ、『八千歳』」

「何?」

おっ。

令月が、何か違和感に気づいた。

「たまに、凄くお腹が膨らんでる女の人がいるけど、あれは何?コウノトリがお腹の中に入れたんじゃないの?」

「何言ってるのさ…。あれはただのデブだよ」

「そうなんだ」

全国の妊婦、及び経産婦の皆様。

この罰当たりなガキ二人に代わって、保護者である俺達が、心から謝罪致します。

済みません。悪気はないんです。ただ知識がないというだけで。

「何て言うか…あなた達は…あれですね」

と、ようやく口を開くナジュ。

「もういっそ、そのまま…間違った知識のまま生きて欲しいですね」

おい。

正せよ。教師だろ。

真顔で何言ってんだ。

「シルナ…どうする?」

「え、えぇっと。まずは幼稚園児向けの、赤ちゃんの絵本を読み聞かせて。それから小学生向けの保健体育の教科書を…」

何とかして、この遅れに遅れた二人の性知識を取り戻そうとするも。

「全く、仕方ないお子様達ですね…。自分の教え子達が、大人の知識経験一切なしとは、全くもって不甲斐ない。僕の前世の師匠に申し訳ないですよ」

知識はともかく。 

経験はなくて良いだろ。まだ子供だぞ。

つーか、お前の前世の師匠って誰だよ。

絶対まともな人じゃないだろ。

「これも何かの縁。前世の師匠に代わって、大人な僕が色々と教えてあげますよ」

「?」

「まずはですね、男女が寝床で裸になって…」

…やべー話が始まりつつある。

「えぇぇっ!?だ、駄目だよナジュ君!?そういうことは、そういうことは、ちゃんと段階を踏んで、あの、あのね、あのっ、あのっ」

パニクる学院長。

お前はとことん、保健体育の教師には向いてないな。

「そしたら男が女の中に、」
 
と、ナジュが禁断の一言を言おうとした、そのとき。

「いやぁぁぁっ!」

「あ」

耐久限界を迎えたシルナが、分身シルナヤモリを消した。

…あーあ…。

…まぁ、あれだ。

明日になったら、二人共、一歩大人の階段を上ったということで。
 
おめでと。