神殺しのクロノスタシス3

「君がぬくぬくしてた間にも、俺は牙を研いでいたんだよ。いつか…君を殺す日が来ると信じてね」

「…」

「さっきまでの糸とは比べ物にならないでしょ?」

…そうだね。

二本の黒いワイヤーの先は、肉体を抉るドリルのような形状になっている。

強度も速度も長さも、さっきまでの糸とは段違いだ。

あれが、『八千歳』の虎の子ってことか…。

おまけに。

「…はぁ…はぁ…」

早速、毒が回ってきた。

あのワイヤーの先、ドリルのような形状のあの部分。

あそこに、毒が塗られている。

さっき僕は、背中にあれを思いっきり食らってしまった。

毒が、身体に回り始めている。

血の流れを意識的に遅くし、臓器に毒が回るのを防ぐ。

僕の身体には、毒薬の耐性がついている。

でも、『アメノミコト』の…しかも、『八千歳』の毒を相手に、どれだけ時間を稼げるか。

「無様な姿だね、『八千代』」

『八千歳』は、木の上に立って僕を見下ろした。

「怪しげな呪い師に騙されて、拐かされて、自分の役目も忘れて裏切って、結局その様?」

「…」

「君にはもう、何の価値もない。人を殺さないなら、君にはもう生きている意味なんてないんだよ」

…生きている意味なんてない。

人を殺さない僕に、価値なんてない。

僕もそう思ってる。そう思っていた。

かつてはそうだった。

だけど、今は違う。

僕は、世界にこんなにも美しい色があるのだと知った。

僕も、この美しい色の世界で生きていたいと思った。

「これで俺の方が強いと証明された。これで俺の方が、頭領様の役に立つと証明された…」

そんなことしか考えられない、君には。

きっと、分からないかもしれないけれど。

「さぁ、終わりにしよう。とどめだよ」

『八千歳』の二本のワイヤーが、僕の心臓めがけて迫ってきた。