神殺しのクロノスタシス3

ハイビスカスやブーゲンビリアを見たがる『八千代』を、花壇に連れていくと。

『八千代』は、アホみたいにポカーンと口を開けて。

咲き乱れる花々に見惚れていた。

そーだろそーだろ。

俺とツキナが、ってか主にツキナが、苦労して育てた花達だからね。

そりゃあ綺麗に決まってる。

「これ全部、『八千歳』が育てたの?」

「いや、俺がって言うか…。ツキナ…もう一人の、園芸部の部長が」

「でも、手伝ったんでしょ?」

「…まーね」

二人で種を撒いたり、二人で肥料をあげたりしたよ。

勿論、水やりも欠かさなかった。

「…なーに?暇なことしてんな〜って思った?」

君が草花育ててる間に、僕は勉強してたから満点wとか思ってる?

別に、そう思われててもいーけど。

事実だから。

しかし。

「ううん…。羨ましいなぁって思ってる」

「…何が?」

「僕には思い付かなかったから。花を育てるなんて」

…?

一瞬考えて、そして理解した。

成程、へー、そうね。

つまり、皮肉ってことだ。

「悪かったね。散々人を殺しておいて、呑気に花育ててごめんなさいね」

「そういう意味じゃないよ」

「じゃあどーいう意味だよ?」

「『八千歳』はたくさん人を殺したよ。それは知ってる。でも、それは僕も一緒だから」

…。

「奪うことは知ってるけど、育てることは知らない。思いもよらなかった。こんな…人殺しでも、生き物を育てることが出来るんだね」

…何だ、それ。

「…結局皮肉じゃん」

「そんなつもりはなかったんだけど…」

あっ、そーですか。

「…それより、『八千歳』」

「何だよ、もー」

「これ、この花…。何本か、切っても良い?」

何言ってるのかなこの人。

「へぇ?俺が丹精込めて育てた花を、掠め取っていこうって?」

「うん。『玉響』にも…見せてあげたいと思ったから」

「…」

…ふーん。

…ツキナ、ごめん。

ちょっとこれ、もらうね。

「いーよ。でも全部は切らないでね」

「うん。何本かで良い。『八千歳』の大事なものだから」

「あと、供えに行くときは俺も行くよ」

「うん。一緒に行こう」

分かってる。

こんなことは、所詮俺達の自己満足で。

『玉響』は、こんな花なんて見たくもない。そんなことより生きていたかったのに、って思うかもしれない。

『玉響』を殺したのは、他でもない俺なんだから。

そんな俺が育てた花なんて、願い下げだと思うかもしれない。

でも。

俺に罪はあっても、花に罪はないから。

そう思って、見てくれないかな。『玉響』。