神殺しのクロノスタシス3

「…あのねー」

「…何?」

「俺が水をやった場所から、草むしりしてくれないかな」

「…?」

「だからぁ!地面が渇いてるから草取りしにくいの!湿らせたら抜きやすくなるから、俺が水あげたところからやって」

「あ、成程」

『八千代』は、俺が既に水をやった畝までやって来て。

雑草を抜き始めた。

「本当だ。地面が湿ってたら、草抜きやすいね」

「…」

「…あ、虫だ」

ん?

「『八千歳』、虫がいるよ。何ていう虫かなぁ…」

何呑気言ってんの?

「しかもビッチリ。なんか気持ち悪…」

「アブラムシでしょ。鑑賞してないで退治しなよ」

そいつら、いくら払っても払っても、うじゃうじゃ湧きやがる。

厄介な害虫なんだ。

一応、除虫剤は使ってるんだけどなー。どうしてもこればかりは。

「分かった」

スラリ、と懐から小刀を取り出す『八千代』。

すげー馬鹿。びっくりする。

「そんなもので退治しようとしないでよ!葉っぱに傷がついたらどーするの!」

「え、でも僕、ちゃんと気をつけるから」

「却下。ちょっと退いて」

俺は両手に、細い糸を作り出し、ピンと張った。

その細い糸を、葉っぱとアブラムシの間に滑り込ませ、そのままアブラムシをこそぎ落とした。

アブラムシは、糸で一刀両断してやったが。

葉っぱには、傷一つついていない。

俺が考案した、アブラムシ退治法である。

無駄な農薬を使うこともなく、それでいて害虫を一網打尽に出来る、と。

ツキナには、大変好評だった。

そして。

「…!」

「…何、その顔」

「凄いね、『八千歳』…。僕だったら、この畑、一日でダメにしちゃいそう」

「だろーね」

俺だって、この一学期間、ツキナに色々習って。

手取り足取り教えてもらって、覚えたことなんだから。

「あと、畑だけじゃなくて、花壇の世話もあるから」

「花壇?何が咲いてるの?」

「今咲いてるのは…ハイビスカスとブーゲンビリアとグラジオラスと…」

「…」

全然分かってない顔してる。

何その花?って顔だなー。無知。

…まぁ、かく言う俺も。

ツキナに教えられて、初めて知ったんだけど。

「あと、ヒマワリ」

「あ、ヒマワリなら知ってるよ」

「ふーん…」

さすがの『八千代』も、ヒマワリくらいは知ってたか。

「ねぇ、見てみたい」

「はい?」

「さっき『八千歳』が言ってた、ハイビ…とか、ブーケ?っていう花」

ハイビスカスとブーゲンビリアね。

「あと、桔梗が咲いてたら、見てみたいな」

桔梗?

「何で?」

「好きな花だから」

ふーん…。

「…トルコキキョウなら植えてたけど、もう開花時期終わったよ」

ガーン!みたいな顔になる『八千代』。

「もっと早く言わないからだよ」

「そっか…。じゃあ、次に咲いたら、見せて」

「まー、覚えてたらね」

次に咲くのはいつだったかな。

まぁ、来年にはまた見られることだろう。