神殺しのクロノスタシス3

――――――…そんなムカつく出来事があった、翌日。



俺はいつも通り、園芸部の畑に顔を出した。

夏休みで実家に帰ったツキナに、頼まれているのだ。

「畑の世話お願い〜!」って。

お願いされたから、応える。

それで俺は毎日、畑に通っては。

草を抜き、水を撒き、虫を取り。

熟れているものがあれば収穫して、自分は食べられないので近所に配る。

花壇の方にも水をやり、草取りもする。

やることがたくさんだ。

正直、俺は『八千代』みたいに、馬鹿の一つ覚えのように勉強するより。

こうして、あれこれ動いている方が、性に合う。

だから俺は76点しか取れないんだよ。分かってるよ。ふん。

ガリ勉『八千代』は、精々机に齧りついていれば良いよ。

その間に俺は、命を育成してるからさ。

内心苛立ちながら、俺は蛇口を捻り、大きなじょうろに水を溜め。

畑に植え付けられた作物に、水をやっていると。

「ねぇ、こっちは水、あげなくて良いの?」

「は?」

振り向くと。

そこには、俺と同じく、水の入ったじょうろを持った…。

…『八千代』が、立っていた。

全く気配を感じない。

気持ち悪い奴。

何でここにいるんだ?ここ、俺の聖域なんだけど。

「そっちはいーんだよ。サツマイモだから。そんなに水やらなくていーの」

昨日たっぷり水撒いておいたから、今日は大丈夫だろう。

今日は炎天下って訳でもないし。地面も渇ききってない。

「じゃあこっちに水やりするね」

容赦なく、カボチャの苗にドボボボ、と水をやる『八千代』。

この馬鹿。

「ちょっと!勢い強過ぎ!支柱倒れるし土が崩れる!もっと優しく!」

「えっ」

「つーか、君何しに来たの?」

「『八千歳』が、いつも畑に入り浸ってるから。楽しいのかなと思って。手伝いに来たんだ」

手伝いだと?

「だったら、水やりはやんなくていーから。草抜いて」

「分かった」

草取りくらいなら、『八千代』にも出来るだろう。

…と、思ったのが間違いだった。

「は!?ちょ、何やってんの!?」

「?」

『八千代』は畑の隅の方に座り込んで、ニラを鷲掴みにしていた。

まさか、それを引き抜くつもりか?

「それはニラ!野菜!」

「え?草じゃないの?川とかによく生えてるよ」

「それ違う植物だから!折角育てたもの勝手に収穫しないでよ!」

「分かった」

危なっ。

折角育てたニラ、草と間違えられて抜かれるところだった。

すると。

今度は、『八千代』は別の畝にしゃがみ込んで、雑草を引き抜こうとしていたが。

「…なかなか抜けないね。根っこが奥に残って…」

「…」

雑草の根を抜こうと、ぐりぐりと土の中に指を突っ込んでいる『八千代』。

…何だろう。

このじょうろの水、『八千代』の頭にぶちまけてやりたい。